2018年8月20日(月)

イスラエル、イランと一触即発
戦闘機撃墜受け報復連鎖

2018/2/11 19:31
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 【カイロ=飛田雅則、アンカラ=佐野彰洋】敵対関係にあるイスラエルとイラン間の緊張が高まっている。10日、イランが支援するシリアのアサド政権が自国を空爆したイスラエル軍機を撃墜した。イスラエルは報復として追加空爆に踏み切った。イランの影響下にあるレバノンのイスラム教民兵組織ヒズボラも巻き込んだ大規模な衝突に発展する懸念があり、中東情勢を一段と不安定化させかねない。

 イスラエル側の説明によると10日、シリア領内からイランの無人機がイスラエル領空に侵入し、同国の攻撃用ヘリコプターがこれを撃墜。その後、無人機侵入への報復措置としてシリア領内のイラン施設を空爆したF16戦闘機の1機がシリアの地対空ミサイルシステムの攻撃を受け、イスラエル北部に墜落した。

 イスラエル軍はこれまでもシリア領内でイランやヒズボラが関係する軍事施設などを空爆してきたが、撃墜されるのはシリア内戦が始まった2011年以降初めて。パイロット2人は脱出し救助されたが、1人は重傷という。

 これを受け、イスラエル軍はシリア領内の同国とイランの軍事施設12カ所を空爆。シリア人権監視団(英国)によると、アサド政権軍の兵士ら少なくとも6人が死亡した。イスラエルのネタニヤフ首相はイランとシリアの攻撃を「侵略だ」と非難し「主権と安全を守るため必要なあらゆる措置を講じ続ける」と強調した。一方、シリアのアサド政権はイスラエルの空爆を「テロ行為だ」と強く批判した。

 イランとの対立を深めるトランプ米政権は今回の局面でも親イスラエルの姿勢を鮮明にしている。米国務省のナウアート報道官は声明で「自らを守るイスラエルの主権を支持する」と表明。「イエメンからレバノンまで地域のすべての人を危険にさらす」とイランを非難した。

 アサド政権の後ろ盾のイランも対決姿勢を崩していない。AFP通信によると、イラン外務省の報道官はイスラエル側の主張を「嘘に頼っている」と否定。シリアには自衛の権利があると強調した。

 アサド政権を支える一方、米国やイスラエルとの関係も重視するロシアのプーチン政権は地域の緊張の高まりに危機感を強めている。プーチン大統領は10日、ネタニヤフ氏との電話協議で、新たな対立を招く行動を避けるよう迫った。

 11年に始まったシリア内戦はイランやロシアが支援するアサド政権と、サウジアラビアなど湾岸アラブ諸国が支援する反体制派、過激派組織「イスラム国」(IS)の三つどもえの戦いが続いてきた。17年10月にISが首都としてきたシリア北部ラッカが陥落。IS掃討作戦はほぼ終了した。

 一時は劣勢にあったアサド政権はロシアとイランの軍事支援で盛り返し、現在は優位にある。内戦を機にイランはレバノンのヒズボラをシリアに送り込み影響力を拡大。ゴラン高原周辺などシリアとイスラエルの国境付近でも軍事拠点を築いてきたとされ、イスラエルは危機感を募らせる。

 「新たな戦略的局面の始まりだ」。イスラエルと過去に戦火を交えたヒズボラは10日、イスラエル軍機の撃墜を受け、シリアやレバノン上空におけるイスラエルの優位性が低下したとの認識を表明した。

 今後、イスラエルとイランの対立がさらに深まれば、欧米などがイランと結んだ核合意に影響する可能性がある。トランプ米大統領は合意の修正を求めており、5月に控える対イラン制裁再発動の是非を巡る判断に影響する可能性もある。

 世界の原油輸出の半分近くを担う中東における新たな緊張は世界経済にとってもリスク要因となる。米株式相場の急落で揺れる投資家心理の悪化に拍車を掛ける恐れもある。

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