2018年7月19日(木)

アップルAIスピーカー発売、「音楽」重視の効果は

2018/2/10 17:53
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 【シリコンバレー=佐藤浩実】米アップルは9日、音声人工知能(AI)で操作するスマートスピーカー「ホームポッド」を米国などで発売した。アマゾン・ドット・コムから3年、グーグルからも1年以上遅れての参入だ。「今から追いつくのは難しい」との指摘も多いなか、アップルがスマートスピーカーを出した狙いは何か。初日に購入した人たちの声から探った。

アップルは9日、米国などで「ホームポッド」を発売した(サンフランシスコの店舗)

アップルは9日、米国などで「ホームポッド」を発売した(サンフランシスコの店舗)

 「『エコー・ドット』は家にあるけど、音がひどくてね。音楽を楽しむならやっぱりアップルがいい」。9日夕方、アンドレ・アルコさん(32)はサンフランシスコ市内の店舗で購入したばかりのホームポッドを抱えながらこう話した。

 エコー・ドットは49ドル(約5300円)で売っているアマゾンのスマートスピーカーで、同社の通販サイトでの商品購入をはじめ声で操作できる「スキル」は2万5000種類を超える。対するホームポッドは349ドルで、音声AIらしい機能といえば現時点では部屋の照明をオンオフしたり、予定や道順を尋ねたりするぐらいだ。

 それでもアルコさんがホームポッドを購入したのは、重低音がしっかりと響く音質の良さに加えて「(音楽配信サービスの)アップルミュージックを僕が使っているから」。アップルも同サービスとの連携を売りにしており、ティム・クック最高経営責任者(CEO)は「一緒に使うと、世界最大の音楽カタログに(声だけで)簡単にアクセスできるようになる」と強調する。

 8人の購入者に話を聞いたところ「(未発売の)カナダに住む友人に頼まれて買いに来た」という男性を除き、実に7人がアップルミュージックの利用者だった。そして半分以上が腕時計型端末の「アップルウォッチ」をつけていた。ホームポッドは発売が当初予定の2017年12月から2カ月ほど遅れたが、トレバー・ハープナーさん(30)は「出来が良いほうがいいから構わない」と言う。

 限られた人数への取材ではあるものの、確認できたのはホームポッドを購入しているのはすでにアップルの「生態系(エコシステム)」に暮らしている人たちということだ。これは1人の保有する機器を増やすことで、スマートフォンなどを買い替える時でも再びアップルの製品やサービスを選んでもらいやすくする同社の戦略に合致する。クック氏の言葉を借りれば「生態系の強化」につながる。

 しかも、音楽は「iPod」や「iTunes」の時代からアップルが重視してきた領域だ。米ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、アップルミュージックの有料課金者は世界で3600万人に達し、米国では今夏にも首位のスポティファイを抜く見込み。見方を変えれば、ホームポッドはアップルにとって数少ない継続課金型のビジネスであるアップルミュージックを強化するための「パーツ」だ。

 一方で、生態系への依存には限界もある。生態系の入り口にあたるスマホでみると、17年のアップルのシェアは世界出荷台数ベースで14.7%。これを超えてホームポッドの購入者層を広げるのは難しい。実際、スマートスピーカーで65%のシェアを持つアマゾンは通販の送料が無料になる「プライム会員」の特典として音楽も聞けるようにしており、選曲などへの強いこだわりがなければ十分といえる。

 「アップルはひとまず得意な音楽で推しながら、(音声AIの)Siriの改良を進めてホームポッドをスマートホーム戦略の中心になる製品に育てようとしているのでは」。米調査会社ストラテジー・アナリティクスのビル・アブロンディ氏はこう推測する。音楽好きの既存ファンの愛用品にとどまるか、iPhoneのように生態系の入り口となるような製品に育つか。ホームポッドの進化次第といえそうだ。

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