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石牟礼道子さんが死去 「苦海浄土」の作家

2018/2/10 8:06 (2018/2/10 9:36更新)
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 水俣病患者の世界を描いた「苦海浄土」をはじめ、数多くの文学作品を通じて水俣病問題や近代社会のあり方を世に問い続けた作家の石牟礼道子(いしむれ・みちこ)さんが10日午前3時14分、パーキンソン病による急性増悪のため死去した。90歳だった。告別式は近親者で行う。喪主は長男、道生さん。

石牟礼道子さん(2016年)

石牟礼道子さん(2016年)

 1927年熊本県・天草生まれ。幼少期に水俣に移り住み、代用教員勤務や結婚を経て歌作や詩作を始めた。

 56年に公式確認され大きな被害が出ていた水俣病に衝撃を受け、68年に「水俣病対策市民会議」の発足に参加。69年には水俣病患者と家族を訪ね歩いた経験に基づいて「苦海浄土 わが水俣病」(第1部)を発表した。自身の思いや患者の一人称の語りなどを交えて公害の実態をえぐり出した作品として注目され、70年の第1回大宅壮一ノンフィクション賞にも選ばれたが受賞を辞退した。

 「苦海浄土」は第2部「神々の村」と第3部「天の魚」で完結。他にも「流民の都」など水俣病をテーマにした文学作品を精力的に発表するとともに、患者らに寄り添った支援活動を続け、水俣病被害者の精神的支柱であり続けた。

 現代の文明がもたらす矛盾に強い関心を抱き、漁民らの豊穣(ほうじょう)な生のありようを描き出すとともに、精霊や動物が生き生きと語る神話的な作品世界を通じて、現代社会の問題点に鋭く光を当てた。小説のほか詩歌やエッセー、新作能など創作の幅は広く、多くの作家や思想家にも大きな影響を与えた。

 73年に水俣病関連の一連の作品でフィピリンの「マグサイサイ賞」を受賞したほか、2003年に詩集「はにかみの国」で芸術選奨文部科学大臣賞を受けるなど受賞多数。07~11年に作家の池澤夏樹さんの編集で刊行された「世界文学全集」には、日本人の作品として「苦海浄土」が唯一収録された。

 晩年はパーキンソン病を患って闘病生活を送りながら、執筆活動を続けていた。

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