2018年8月21日(火)

農産物輸出、遠い1兆円目標 安定供給など課題多く

2018/2/9 19:37
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 政府が掲げる農林水産物と食品の輸出目標が正念場だ。農林水産省が9日発表した2017年の輸出額(速報)は初めて8000億円台を突破したが、伸び率は鈍化。「19年に1兆円」の壁は高い。

品質を強みとする日本の農産物や加工食品は海外でも評価が高い

 17年の輸出額は8073億円で、前年に比べて7.6%増えた。5年連続で過去最高を更新したものの、伸び率は2年連続で1割に届かなかった。1~2割増を保った15年までの3年間と比べると1兆円目標の達成ペースは落ちてきている。

 「今までの努力の積み重ねがかなり出てきた」。斎藤健農相は初の8000億円突破をこう評価した。ただ、1兆円目標の達成見通しを問われると「低い目標であればすぐ達成できる。高い目標を掲げて果敢に努力する」と述べるにとどめた。

 甘みなど品質を強みとする日本の農産物や加工食品は海外でも評価が高い。17年はイチゴや牛肉、日本酒などの輸出額が軒並み過去最高となった。こうした勢いを持続させるには長期的な安定供給が重要になる。

 「現地の高所得者層が求める高品質の果物が足りない」。タイに販売拠点を持つ卸売業者の担当者は頭を抱えている。現地では日本の百貨店に並ぶブドウなどが売れ筋。出店先ではより多くの数量を求められているが、日本国内向けと調達競争になり常に仕入れに苦労しているという。

 安定供給で海外の需要を獲得するには、生産者の内向きな意識を変えることが欠かせない。しかし、アジアに牛肉を輸出する農協の担当者は「若手生産者は輸出に前向きだが、高齢になるほど新しい挑戦に消極的だ」と肩を落とす。

 農林水産物と食品の輸出を支援する日本食品海外プロモーションセンターの大泉裕樹事務局長は「日本の農林水産物と食品はこれまで内需に依存してきた。少子高齢化が進むなか、海外に目を向けることが欠かせない」と指摘する。

 知財管理も喫緊の課題だ。韓国や中国は日本で開発されたブドウ「シャインマスカット」やイチゴ「とちおとめ」などを無断で栽培・交配し、アジア各国に輸出している。ただ、種苗に特許を与える品種登録を海外でしていないため、栽培を差し止めるのは難しいのが実態だ。

 こうした「模倣品」が出回れば日本の農産物の輸出拡大の足かせになる。輸出先の消費者に誤認されたまま一から日本ブランドを構築するには労力もかかる。農水省は韓国が日本のイチゴを無断で栽培・交配したことで最大220億円の輸出機会の損失があったと推計する。

 政府内では1兆円目標の達成は「かなり難しい」との声もあがる。ただ、国内市場が縮小するなか、人口増や経済成長が続く海外で活路を見いだせなければ農林水産業の成長は見込みにくい。山積する課題の解決は待ったなしの状況だ。(池田将)

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