道路法「沿道規制」60年ぶり蘇生へ もらい事故防ぐ

2018/2/10 6:00
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日経コンストラクション

国土交通省は、落石対策などを沿道の土地所有者に義務付ける「沿道規制」に本格的に取り組む。道路法改正案で、土地所有者に防災対策を命じた道路管理者が、その対策費用を所有者に補償する規定を新設。2018年2月2日に閣議決定した。土地所有者が防災対策に取り組みやすい環境を整え、私権への配慮から死文化していた沿道規制を蘇生させる。

沿道からの落石で死傷事故も発生している(写真:国土交通省)

沿道からの落石で死傷事故も発生している(写真:国土交通省)

道路法では、道路の構造や交通に及ぼす損害や危険を防止するため、道路管理者が道路に接続する区域を政令や条例で定める基準に従って「沿道区域」(片側幅20m以内)に指定できると規定。さらに、沿道区域内の土地や竹木、工作物が道路に影響を及ぼす恐れがある場合には、道路管理者が土地所有者などに必要な防止措置を命じることができるとしている。

この規定は1952年の道路法制定時から設けられており、それ以前の旧道路法にも同趣旨の規定があった。しかし、道路管理者による実際の運用は極めて慎重に行われてきた。

例えば、国交省では法施行から半世紀以上たった現在でも、直轄国道の沿道区域を指定するための政令を定めていない。背景には、道路法の適用は道路区域内に限るという原則があることに加え、私権制限を伴う道路区域外への適用をむやみに拡大すべきではないという考え方がある。

■泣き寝入りが続いてきた道路管理者

道路管理者の間では、私権に配慮するあまり運用に対し萎縮する傾向も強かった。沿道の民有地の防災対策は、道路法で規定している通り、本来なら土地の所有者らが実施しなければならない。しかし、落石対策など大掛かりな工事になると費用がかさむため、所有者が個人の場合などは危険だと分かっていても放置してしまうことが珍しくなかった。

道路管理者も、所有者に防災対策を依頼するだけにとどめたり、所有者の了承のもと道路管理者の費用負担で工事を代行したりすることが少なくなかった。

沿道からの「もらい事故」の例。2014年に神奈川県横須賀市の市道脇の斜面が大雨で崩落。土砂が反対側の駐車場まで流れ出て車両2台が被害を受けた。市は斜面が民有地であることから有効な対策工事を実施できなかった(写真:日経コンストラクション)

沿道からの「もらい事故」の例。2014年に神奈川県横須賀市の市道脇の斜面が大雨で崩落。土砂が反対側の駐車場まで流れ出て車両2台が被害を受けた。市は斜面が民有地であることから有効な対策工事を実施できなかった(写真:日経コンストラクション)

道路管理者にとって、いわば泣き寝入りの状態が続いてきた。「仮に道路管理者が道路法に基づいて所有者に防止措置を命じたとしても、多額の費用負担を理由に実施を拒む所有者が憲法上の財産権を盾に法廷で争った場合、道路管理者が負ける恐れがある」との見方が、法律通りの運用を難しくしてきた面もある。

加えて、道路脇の民有地からの落石事故などの責任を問われた裁判で、「事故を予見できたのに通行止めなど有効な対策を講じなかった」などとして、道路管理者が敗訴するケースが多かったことも、そうした傾向に拍車をかけた。

そこで改正案では、損失補償規定を新設。道路管理者は防止措置命令によって損失を受けた所有者らに対して、通常生じるはずの損失を補償しなければならないとした。所有者らが多額の費用負担を伴う防災対策に取り組みやすくするとともに、道路管理者が沿道区域指定と防止措置命令を実施しやすい環境を整える狙いがある。

併せて、これまで根拠法令があいまいなまま所有者らに代わって対策費を負担してきた道路管理者が、法律に基づいて適切に費用を支出できるようにする。さらに、損失補償までを含めた一連の手続きを整えることで沿道規制の正当性を確保し、道路管理者が所有者らとの法廷闘争に負けないようにする。

国交省は今後、今国会での改正案の審議を経て、17年度内の成立を目指す。改正案が成立すれば、道路法制定後60年余りにわたって手を付けてこなかった沿道区域指定のための政令を定めることになる。

(日経コンストラクション 谷川博)

[日経コンストラクションWeb版 2018年2月8日掲載]

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