ツイッター、身の丈経営で初の黒字 規模より質追う
米ツイッターが8日発表した2017年10~12月期の決算で最終損益が9107万ドル(約100億円)の黒字となった。黒字は13年11月の上場以来初めて。市場予想を大幅に上回る決算に8日の米株式市場でツイッターの株価は一時約3割上昇した。ただ、利益改善は広告サービスや研究開発、販促の分野を絞りコストを削減してきた効果が大きい。規模拡大よりも質重視の「身の丈経営」に転換したともいえる。
開発費・販促費をカット
黒字化したツイッターだが、実は月間利用者が3億人超で伸び悩む状況は変わっていない。10億人を超えるサービスを複数持ち、規模の経済を展開する米グーグルや米フェイスブックとの間には埋められない差がある。フェイスブックとは時価総額で20倍以上の差がついている。ツイッターはジャック・ドーシー最高経営責任者(CEO)が15年に復帰して以来、デジタル広告での劣勢という現実を受け入れ、うまくいかなかった分野を縮小してきた。
グーグルやフェイスブックのように全ての広告商品を手広くそろえるのではなく、メリハリをつけて黒字化への道筋を徐々につけた。10~12月期の研究開発費は約1億3千万ドルと、1年前の3分の2の水準まで切り下げてきている。消費者にアプリのインストールを促す広告や、ネット通販との連携などの分野を縮小してきた効果が出ている。販促費も前年同期比で約3割カットした。
結果、米国の売上高は前年同期に比べ5四半期連続で減少が続く。米国でのデジタル広告のシェアでは、急成長する米アマゾン・ドット・コムにも抜かれた。一方で、同じ期間中、毎日利用する人数は2桁増の高い伸びが続く。
ドーシー氏「情報の品質向上」
決算発表後の会見でドーシーCEOは、月間利用者数の伸びが頭打ちとなる一方で、毎日使うコアな利用者は増えている一つの理由として「情報品質」の向上を挙げた。偽アカウント、怪しいマーケティングや工作活動に使われる自動応答アカウントなどを自動で発見し検閲するシステムの効果が出ていると強調した。ツイッターは投稿やアカウントを選別しメディアとしての質を高めることが広告価値向上のカギとみて、コスト削減の中でもこの分野には重点投資をしてきた。
不特定多数が閲覧する半公共メディアであるツイッターは、暴力や差別を助長する投稿は削除する規約を作り過激派や極右団体の多くのアカウントを閉鎖している。その一方で18年には選挙で選ばれた政治指導者の投稿については過激な内容でも原則として削除しない方針を打ち出した。メディアとしての「編集方針」の整備を積極的に進めつつある。様々な編集判断が求められる投稿の品質管理はそれを加速させることになる。
競合のフェイスブックがメディアとして扱われるのを嫌い、論争を呼ぶ投稿の判断をできるだけ利用者コミュニティーに委ねようとするのとは対照的だ。
ツイッターはデジタル広告の大型銘柄として、投資家から「次のフェイスブック」と期待され上場した。だが、その後フェイスブックとは対照的に利用者の伸びが鈍化すると株価は低迷し経営が混乱した。ようやく実現したツイッターの黒字化は、巨人フェイスブックの影を振り払い、メディア兼デジタル広告の中堅企業として生き残る道をさぐっていることを象徴している。
(シリコンバレー=兼松雄一郎)