2018年10月21日(日)

パナソニック、冬の祭典の楽しみ方を提案

2018/2/9 6:30
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韓国の平昌(ピョンチャン)で冬季五輪がきょう開幕する。選手たちだけでなく、企業にとっても、五輪は日ごろ鍛えてきた強みや技を世界に示す場になっている。日本企業では、パナソニックがスマートフォン(スマホ)を使った新たな観戦方法を提案しようとしている。

 平昌冬季五輪の開会式を前に最終の準備作業が行われる会場の五輪スタジアム=7日、韓国・平昌(共同)

平昌冬季五輪の開会式を前に最終の準備作業が行われる会場の五輪スタジアム=7日、韓国・平昌(共同)

羽生結弦選手の4回転ジャンプを目にした後、手元のスマホでスロー映像をリプレイする――。五輪関係者ら限定ではあるが、平昌五輪のフィギュアスケート会場では、こうした観戦が五輪で初めてできるようになる。

仕掛け人はパナソニックだ。フランスのVOGO(ヴォゴ)社が開発した動画配信システム「VOGO」を使い、ライブ映像を観客のスマホやタブレットに配信する。

パナソニックはVOGOの日本での独占販売権を2017年2月に獲得している。これまでにラグビーやゴルフなど6種目のスポーツでこのシステムを使った観戦方法を提供した。

初期投資は10分の1

VOGOの特徴は手軽さだ。場内にいる観客は専用アプリをスマホにダウンロードすればすぐに使える。データを送信してもサーバーに負担がかからないような工夫もしている。

競技場内に範囲を限定した仮設Wi―Fiやサーバーの設置を1~2日でできる。一般的な場内配信システムに比べて初期投資額が約10分の1の数千万円程度に抑えられるという。

パナソニックは平昌五輪のフィギュアスケートで複数アングルの動画配信に取り組む(イメージ)

パナソニックは平昌五輪のフィギュアスケートで複数アングルの動画配信に取り組む(イメージ)

ワンセグでは、中継映像をスマホで見ていても、見たいシーンやアングルを自分で選んで見るようなことは難しい。だが、VOGOは、ワンセグのような一度きりの放送ではなく、繰り返し見られる。複数のアングルから選んだり、スローやズームの機能を使ったりして、見たいシーンやアングルも選べる。目や耳の不自由な観客を想定して、字幕や音声解説で伝えることも可能だ。

平昌でのVOGOの試験提供は、20年の東京五輪・パラリンピックでの本格採用に向けたプレゼンテーションの意味合いもある。もし、東京のメイン会場である新国立競技場に導入されれば、陸上競技のように同時に進行する複数の種目を楽しみやすくなる。

「開会式で使えば、自国選手を手元のスマホでアップにしてみるといった使い方ができる」(パナソニックの東京オリンピック・パラリンピック推進本部の笹木秀一スポーツ事業推進部長)

パナソニックが目指すのは東京でのVOGOの本格採用だけではない。18年度中にも国内のスタジアムにVOGOを常設したい考えだ。VOGOのよさを世界にアピールできれば、導入先をさらに広げられる。

パナソニックと五輪との関係は、1988年のカナダ・カルガリーの冬季五輪で五輪の最高位のスポンサーである「TOP(ザ・オリンピック・パートナー)」を務めてから。それ以降、テレビやカメラ、白物家電などを大会の会場や事務局などに納入してきた。

2012年のロンドン五輪では開会式と閉会式向けに「高輝度プロジェクター」を納入、立体物や平面に映像を映すプロジェクションマッピングで演出を盛り上げた。

シェア世界首位

当時、大規模な競技場に使われる高輝度のプロジェクターは海外勢が強かった。だが、パナソニックはロンドン五輪での実績を前面に押し出してシェアを伸ばした。直近でもシェア45%と世界首位を維持している。

安倍晋三首相が人気ゲームのキャラクターにふんして登場して話題となった16年のリオデジャネイロ五輪閉会式。経費節減で大がかりな舞台装置をつくることができなかった式典を、パナソニックはプロジェクションマッピングで演出した。

五輪開幕の1カ月前から3人の技術者が現地に入り、英国やフランスから集まった映像のプロ約30人とチームを編成した。式典のストーリーや演目が日々、変わっていくなかで準備を進めた。その動きは、パナソニックが家電の単体売りから企業向けシステムなどの企業間取引を重視し始めたこととも符合する。

平昌冬季五輪でも開会式・閉会式向けにレーザー光源の輝度を3万ルーメンクラスと、従来の1.5倍に高めた製品を納入した。オリンピック、パラリンピックあわせ合計4回のセレモニーの運営を支援する。複数の会場への機材設置のため、30を超える数のスタッフが開幕前から現地入りして準備を進めてきた。

パナソニックは東京五輪の会場で使われる機器の販売などで1500億円の売上高を見込む。だが、本当の狙いは、モノとシステムを組み合わせてスポーツ分野で選手や観客の手助けができるというイメージを確立する「無形の資産」だ。

VOGOも含めた提案メニューを増やして、ハードとソフト両面のツールを抱える総合力を生かす。笹木スポーツ事業推進部長は「東京五輪を機にスポーツビジネスを定着させ、協業も広げていきたい」と話す。

(大阪経済部 飯山順)

[日経産業新聞 2018年2月9日付]

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