2018年8月22日(水)

米国債「大増発」時代 金利上昇圧力一段と

2018/2/9 2:00
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 【ワシントン=河浪武史、ニューヨーク=大塚節雄】米議会は連邦政府予算の歳出上限を、今後2年で計3千億ドル(約33兆円)積み増す案で最終調整に入った。中間選挙を控えて与野党とも歳出増に突き進み、国防費やインフラ投資を大幅に増やす。米議会は1.5兆ドルの大型減税を決めたばかり。米国債は大増発時代に入り、市場が懸念する米長期金利の上昇圧力が一段と強まる。

 共和党の上院トップ、マコネル院内総務が7日、民主党の上院指導部と歳出引き上げで合意したと発表した。2018会計年度(17年10月~18年9月)は歳出の法定上限を1430億ドル引き上げ、19会計年度も同1530億ドル増やす。前回決めた16会計年度の引き上げ額は440億ドルにすぎず、大幅な増額となる。

 18年度は国防費だけで800億ドル積み増し、インフラ投資などの非国防費も630億ドル増やす。トランプ政権は17年5月の予算教書で国防費は540億ドル増やす一方、非国防費は540億ドル減らすとしていた。上下両院は8日、3月23日を期限とする新たなつなぎ予算とともに歳出上限の引き上げを採決する方向だ。

 歳出に強い膨張圧力がかかるのは、秋に中間選挙があるからだ。与党・共和党はオバマ前政権下で縮小した国防費を元に戻すと公言。下院では1月末に国防費だけで年1千億ドル強増やす予算案を独自に可決した。上院は与野党の議席が拮抗し、野党・民主党が求める薬物中毒対策やインフラ投資も計上。国防費・非国防費とも膨張した。

 米連邦政府の全体の歳出規模は約4兆ドル。国防費や公共事業など裁量的経費が約3割を占め、社会保障経費を軸とする義務的経費が6割ある。トランプ政権は低所得者向け給付などを減らすと主張してきたが、歳出削減論は進んでいない。

 米議会は昨年末、10年間で1.5兆ドルの巨額減税を成立させた。税収は年1千億ドル規模で減る見込み。収入が減るのに支出は増えるため、米財政は国債の発行という借金に頼る部分が今後ますます大きくなる。すでに米連邦政府債務は20兆ドルと過去最悪の水準にある。

 トランプ政権は減税やインフラ投資を公約としており、もともと財政赤字の拡大懸念が強まるのは確実だった。それでも金融市場はこれまで、米景気が刺激されると歓迎してきた。ここに来て潮目が変わったのは、米国債が大量増発され、長期金利が上昇することへの悪影響に市場が神経をとがらせ始めたためだ。

 折しも、米連邦準備理事会(FRB)は過去の量的緩和で買い込んだ米国債の保有額を減らしている。FRBは18年だけで2千億ドル強減らす見込みだ。減税、歳出増、金融政策運営という複合的な要因を背景に米国債大増発の現実味が増し、債券市場での需給悪化への懸念から長期金利が上昇する構図が広がった。

 例えば、連邦政府が公認するプライマリーディーラーの予測では、18年度に市場で調達が必要な財政資金額は9550億ドルと、前年度比84%増える。19年度は1兆830億ドルへとさらに膨らむ。これまでと同じペースで米国債を発行する場合と比べ、調達額は18年度に約3700億ドル、19年度は約8800億ドルも多い。その分は国債を追加発行しないと賄えない。

 加えて、大型減税などで景気が上振れすれば、物価上昇を見込んだ金利上昇圧力も高まる。低金利下で借金を膨らませた企業にとって、業績を下押しする逆風となる。

 トランプ政権は近く税財政方針を示す19年度の予算教書を提出する。官民合わせて10年で1.5兆ドルという巨額インフラ投資案の具体化にも入るが、財政健全化を素通りすれば、市場だけでなく政権の足元も揺らぐ。

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