2019年5月27日(月)

万博誘致、変わるインフラ
万博2025

2018/2/8 2:00
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2025年の国際博覧会(万博)の誘致に成功した場合、予定地の夢洲や関西で交通網の再開発が進みそうだ。期間中は約2800万人の入場者数が予想されている。会場付近には大阪府・市がカジノを含む統合型リゾート(IR)施設の誘致に取り組む。採算性の問題などで凍結されていた鉄道計画も動き出す。

万博会場の夢洲は臨海部の人工島。かつて五輪招致の際に会場や選手村にする計画だったが、招致失敗で10年以上活用されないままだった。交通手段は現在は車だけで、鉄道の延伸計画が相次ぐ。大阪市営地下鉄は中央線のコスモスクエア駅から夢洲までの約3キロメートルの延伸工事を検討。夢洲中央部に新設する「夢洲駅(仮称)」と結び、24年の運行開始を目指す。

JR西日本は沿線にユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)がある桜島線を夢洲まで延ばすことを検討。大阪駅からは30分以内で到着可能となりそうだ。京阪電気鉄道も京阪中之島線を延伸させ、大阪市営地下鉄中央線への接続を検討中だ。京阪電鉄の加藤好文会長は「夢洲と京都を結ぶアクセス鉄道にしたい」と意気込む。

鉄道だけではない。夢洲への車の交通量増加に対応するため北側の人工島、舞洲と結ぶ夢舞大橋を4車線から6車線に拡幅する計画だ。大阪府の試算では万博関連事業費として地下鉄延伸や道路拡幅などで少なくとも約730億円を見込む。

夢洲以外にも期待が集まる。大阪中心部と関西国際空港を結ぶ「なにわ筋線」は大阪府・市、JR西や南海電気鉄道、阪急電鉄が事業化を推進。31年春完成を予定し、関空と大阪市を最短40分程度でつなぐ。リニア中央新幹線や北陸新幹線の大阪延伸、阪急電鉄の伊丹空港線なども続く。

17年の訪日外国人客数は2800万人を超えた。うち、大阪を訪れた訪日客は1111万人と、国内でも有数の規模をほこる。万博やIRによって交通網の整備が進むことで、訪日客の利便性が高まり、更なる集客と、それに伴う経済波及効果が期待できそうだ。

IR含め効果2.6兆円

2025年の国際博覧会(万博)を誘致できた場合、ホテルや商業施設などの建設が進みそうだ。万博会場付近にはカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致に取り組んでおり、日本総合研究所は万博とIR施設の運営で、関西への経済効果は25年単年で2兆6000億円と試算している。

内訳は万博の開催による直接効果が1兆5000億円、IR施設の運営で6900億円など。万博が終了した26年以降も年間1兆1000億円規模の経済効果が続く見込みだ。

2005年日本国際博覧会協会によると、愛知万博での経済効果は1兆6000億円。名古屋のホテルで満室が続いたほか、百貨店がにぎわった。関西の人口や訪日外国人の増加を考慮すると、大阪ではより大きな効果が期待できるという。

万博会場の周辺にはホテルや商業施設などの開発計画もある。経済団体や自治体でつくる「夢洲まちづくり構想検討会」によると、夢洲には長期滞在型のリゾート施設などを段階的に整備。人工知能(AI)など先端技術を活用したまちづくりを目指す。

今回の万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」だが、もともと関西には、京都大学のiPS細胞研究所をはじめ生命科学を研究する学術機関が集積している。大阪市内には塩野義製薬など製薬大手が本社を構えるほか、ミズノなどスポーツ用品大手も多く「健康都市」の土壌はある。「万博開催を機にライフサイエンス分野を大阪の新産業に育て、府民の健康増進にもつなげたい」(大阪府の万博誘致推進室)という。

大阪府や市、経済界は万博やIR施設の運営を起爆剤にホテル、商業施設の建設や新産業育成に力を入れ、関西経済の底上げを目指す方針だ。関西経済連合会は20年度に近畿2府4県の名目域内総生産(GRP)で120兆円を目標とする成長戦略をまとめた。国内総生産(GDP)に占める関西の割合は現在は16%弱まで低下しているが、これを20%程度まで高めたい考えだ。

資金調達なお課題

万博の誘致には開催費用の確保が重要な課題となる。建設費1250億円を国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担することで大筋合意したが、民間負担の400億円強をどのように集めるか、具体策はまだ決まっていない。

2017年2月に企業からの寄付を全国で募るため、誘致組織のトップに経団連の榊原定征会長を招いた。榊原会長は「誘致に百パーセント集中しており、金勘定の暇があったら一国でも多く支持を集めなくてはならない」と資金調達の議論は後回しになっている。

05年の愛知万博では会場建設費の1350億円を国、愛知県・名古屋市、経済界で450億円ずつ負担した。だが経済界からの寄付金は約200億円にとどまり、競輪など公営ギャンブルの収益から残りを集めた。

愛知万博はトヨタ自動車グループが支えた。業績への貢献度が分かりにくい万博への資金負担には慎重な企業が多く、大阪万博のスポンサーはまだ決まっていない。最終的に各社に資金提供をお願いする「奉加帳方式」になる可能性がある。

大阪府・市は万博やカジノを含む統合型リゾート(IR)に向けて夢洲のインフラ整備を進める方針で、会場建設費に加えて関連事業の費用もかさむ。高い経済効果が期待される一方、開催に向けた具体的な議論や対応が求められる。

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