千葉大、ヨウ素の高度利用へ4社と連携

千葉大学は千葉県内で豊富に産出されるヨウ素の高度利用を目指し、太陽電池や医療への応用に向けた産学共同研究に乗り出す。7日付で伊勢化学工業など4社と共同研究に関する包括連携協定を締結。5月に完成する「千葉ヨウ素資源イノベーションセンター」を拠点に新たな技術や製品を開発する。ヨウ素を多角的に利用し、新たな地場産業に育てる。
共同研究には伊勢化学工業と合同資源(東京・中央)、日宝化学(同)のヨウ素関連メーカー3社のほか、分析機器の開発を手がけるナックテクノサービス(東京・中野)が参加する。徳久剛史学長は同日の締結式で「(外部の技術やアイデアを取り込む)オープンイノベーションを積極的に推進し、地方創生と産官学連携を同時に進めたい」と述べた。
5~6月をメドに千葉市の西千葉キャンパスに開設するイノベーションセンター(通称CIRIC)では千葉大の教員や学生、4社のスタッフら30人程度が研究に取り組む。最新鋭の分析機器を共有するほか、参加企業の研究室を設け、各社固有のテーマにも取り組めるようにする。
CIRICは電機・医療分野を中心にヨウ素の需要開拓に取り組む。高純度のヨウ化鉛を安定供給する技術を確立し、次世代の薄型太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の素材として製品化を目指す。ペロブスカイト太陽電池は軽く、簡単に曲げられるため、幅広い分野での導入が期待されている。
ヨウ素を使った代表的な医療用品であるレントゲン造影剤の国産化にも挑戦する。「価格の勝負では中国にかなわない」(千葉大産学連携課)と判断し、画像を鮮明に写したり、カラフルに表現したりする高度な技術開発に取り組む。かずさDNA研究所(木更津市)や製薬会社とも連携し、放射性ヨウ素の薬剤によるがん診断・治療法の確立も目指す。
日本はヨウ素の生産で世界シェアの3割を握っており、茂原市やいすみ市などの主産地を抱える千葉県が国内生産の75%を占める。海外にも多く輸出しているが、大半は造影剤や消毒液の原材料として出荷され、付加価値の高い製品はほとんどなかったという。
米国地質調査所(USGS)の集計によると、日本国内のヨウ素埋蔵量は500万トンと世界全体の3分の2を占める。ヨウ素は日本が世界に供給できる数少ない天然資源であり、有効利用が課題となっている。
プロジェクトを主導する千葉大の荒井孝義教授は「経済効果を高めるには千葉県でヨウ素を製品化し、供給する体制づくりが必要だ」と話す。ヨウ素は幅広い分野での応用が見込まれており、4社以外にも共同研究への合流を希望する企業が現れれば、CIRICで受け入れる。
関連企業・業界