2019年5月24日(金)

金融正常化ゆらぐ土台 米欧中銀、市場安定とジレンマ

2018/2/8 1:00
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【ニューヨーク=大塚節雄、ベルリン=石川潤】米欧中銀が米国発の株式市場の混乱に揺さぶられている。両中銀が進める金融正常化の前提となる市場の安定がぐらついたためだ。堅調な経済が続き物価が上向く見通しが浮上するなか、市場だけに配慮して正常化を遅らせるのは難しい。仮に市場の混乱が長引くようなら、景気への影響も懸念される。市場との対話は一段と難しくなっている。

「私の(経済)見通しは変わらない」。ニューヨーク連銀のダドリー総裁は7日、米株急落を「さほど大きな衝撃ではなかった」と語り、利上げの継続を示唆した。これまでの急上昇の反動が出たにすぎず「株価水準は昨年よりもかなり高い」と指摘した。

今回の株安の起点は、1月の雇用統計で賃金が大幅に上昇したことだ。インフレ予想の高まりを背景に米長期金利が上昇し、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ加速の観測が強まった。

市場ではパウエル新議長に利上げ路線の減速を期待する声が出ている。FRBの今年の利上げシナリオは3回だが、米金利先物の「利上げ確率」は2回と3回が3割強でほぼ並ぶ。1月末は3回の予想が4割弱と10ポイント近く勝り、4回の予想も2割に高まっていた。

バンクオブアメリカ・メリルリンチのエコノミスト、イーサン・ハリス氏は「リスク資産の脆弱さが続けば、FRBが利上げ計画の再考を迫られる可能性がある」と指摘する。市場はパウエル新議長の2月末の議会証言に注目する。

だが経済が好調でインフレ率に持ち直しの兆しが出ている以上、FRBが簡単に市場の「催促」に応じることはできない。利上げを遅らせれば「インフレの放置」と受け止められ、米長期金利の上昇に再び火が付き、かえって市場の混乱が広がるジレンマも抱える。

ただ利上げ継続を声高に唱えると、市場の不安定さが増すリスクも残る。逆資産効果で消費者心理が冷え込み、米経済に悪影響を与える可能性も捨てきれない。

イエレン前議長は物価が停滞するなか、ゆっくり利上げを進めた。支えは先行きは物価が上向くとの予測に加え、株高など「金融環境の緩和」だった。英国の欧州連合(EU)離脱決定などの際には利上げを見送り、市場に配慮してみせた。

「高すぎるとは言いたくないが、高い」。イエレン氏は議長退任直前のインタビューで、株価について、こう語った。「バブルかどうかを言うのは難しいが、指標の高さは心配のタネだ」。だがイエレン体制の市場配慮が空前の株高につながった面は大きい。市場安定が利上げを可能にした半面、混乱のリスクを蓄積してきた面は否めない。

パウエル新議長への交代と前後し、市場環境は激変した。トランプ政権は減税やインフラ投資促進などに突き進んだ。株急落の前から米債券市場ではインフレの見通しが上向いていた。パウエル氏は利上げを織り込ませつつ、市場の過度な混乱を防ぐ微妙な手綱さばきが求められている。

市場の動向に神経をとがらせるのは欧州中央銀行(ECB)も同じだ。量的緩和政策の終了を探り、3月の理事会の声明文で緩和縮小の姿勢を明確に示す可能性がある。ドラギ総裁は緩和縮小を見込んだユーロ高に対して「不確実性の源」と警戒してきたが、株安連鎖を受けて株式相場にも目を配らざるを得ない。

ドル建て債務の膨張に悩む新興国の金融当局は米国が進める金融正常化が市場に与える影響を注視している。ドル高が進めば返済負担が重くなるためだ。3月にアルゼンチンで開く20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議にはパウエルFRB議長が参加する。各国が米国の金融政策の先行きに説明を求める場となる可能性がある。

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