2018年5月21日(月)

同性婚、世界で合法化の動き (グローバルViews)
国際アジア部 松本史

グローバルViews
コラム(国際・アジア)
2018/2/14 6:50
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 同性同士の結婚、同性婚を認める動きが世界で加速している。2017年は台湾で合法化の見通しが立ち、ドイツやオーストラリアも議会が法案を可決した。2000年代初頭から西欧を中心に合法化の動きが続く一方、アジアでは足踏みが続くなど、地域ごとの温度差は大きい。ただ、各国・地域の同性婚への姿勢は経済に与える影響も大きく、議論は人権問題にとどまらない広がりをみせる。

 「社会倫理の維持を理由に同性婚ができないのは非合理で差別的。法の下の平等に反する」。17年5月、台湾司法院大法官会議(憲法法廷)は結婚の前提を男女とする民法の規定が憲法の趣旨に反するとし、2年以内の立法措置を求めた。冒頭の言葉は司法院の呂太郎秘書長の解釈だ。

 アジアで同性婚への見通しが立ったのは台湾が初めてだ。人権問題で何かと批判を浴びる中国との違いを世界にアピールしている、とうがった見方も出るが、画期的なのは間違いない。現時点では日本、中国、韓国をはじめアジアの国・地域はいずれも同性婚を合法化していない。中でも厳しいのはイスラム教徒が多数を占める国だ。

 白いローブを着せられた男性が群衆の前に引き出され、頭から脚まで布で覆った人物にむちで打たれる――。ロイター通信などは17年、インドネシアのアチェ州で同性との性行為を理由に男性がむち打ちにされる様子を報じた。同州はイスラム法を適用、条例で同性愛者の性行為を最大100回のむち打ち刑と定める。人権団体のHPなどによると、イスラム教が国教のマレーシアでも、男性の同性愛は禁錮刑の対象だ。

 同性婚の合法化への動きは、人権意識が高い西欧を中心に始まった。01年のオランダを皮切りに、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデンなどが続いた。一方、イスラム教国が多い中東に加え、アフリカ諸国はほとんどが同性婚を認めていない。

 外国法制研究会代表の伊藤弘子名古屋大准教授は「欧米は家族に(同性婚が)認められないなら縁を切ってでもパートナーを取る、という傾向が強い。一方コミュニティーや親族に受け入れられることを重視する文化圏はアジアに限らず多い」と指摘する。そのうえで「国・地域によって目指す社会の理想は異なり、正しさや優劣を外から言うべきではない」と話す。

 同性婚を巡る議論の根幹には、性的少数者(LGBT)の人権問題がある。ただ人口の数%といわれるLGBTへの政策は、人権に加え国・地域の経済にも正負両面での影響を与えるとみられる。

 米カリフォルニア大学ロサンゼルス校のウィリアムズ研究所は、15年に米最高裁が同性婚を合憲と認める判決を下してから1年で12万3千組の同性カップルが結婚したと指摘。結婚式などの直接的な経済効果が13億5300万ドル(約1400億円)に上るとの試算を公表した。

 一方、同性婚を認めないデメリットもある。米国人俳優でゲイを公表しているジョージ・タケイ氏は「日本も同性婚を早期に認めなければ、高度人材の受け入れなどに支障をきたす」と警鐘を鳴らす。実際、同性婚が合法化されていない日本では、ビジネスなどで日本に滞在する外国人の配偶者が同性の場合、異性配偶者には認められる在留資格「家族滞在」が認められない。こうした制度を嫌い、LGBTの人材が日本を避ける可能性はある。

 同性婚の法制化を求めるNPO法人、EMA日本によると、同性婚を認める国・地域の域内総生産(GDP)は世界の半分以上を占めており、米国をはじめ日本と政治的、経済的につながりが深い国も多い。日本の民間企業からも同性パートナーを家族として認める社内制度やサービスが相次ぎ登場している。企業イメージの向上に加え、優秀な人材を獲得、維持する目的もある。多様性は社会を豊かに、たくましくする。国にも、こうした民間企業同様の配慮としたたかさが求められている。

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