米法人減税、広がる影響 トヨタは2919億円の増益効果
証券部 湯浅兼輔
米国の税制改革による企業業績への影響が広がっている。トヨタ自動車は6日、減税効果で2018年3月期の純利益が2919億円押し上がると発表した。既にホンダも同期に3461億円の増益要因になると公表済みだ。一方、減益要因になる企業もあり、米国で事業展開する企業の業績を一時的に揺さぶっている。

税制改革による企業業績への影響は、税金を「前払い」しているか、「後払い」するかで異なる。トヨタは米金融子会社を中心に税金の後払いにあたる「繰り延べ税金負債」を抱えている。従来35%だった米連邦法人税が21%に下がったことで将来支払うべき税金は減る。会計ルールでは繰り延べ税金負債を取り崩す必要があり、この処理によって税金負担が減って利益は増える。
一方、セイコーエプソンなどの「前払い」の場合、税率引き下げで将来に税負担が軽減される前提条件が変わるため、利益が減る。JVCケンウッドは米子会社が過去の赤字で生じた繰越欠損金を、税金の前払いにあたる「繰り延べ税金資産」として計上していた。法人減税を受けた繰り延べ税金資産の取り崩しが、15億円の利益の押し下げ要因になる。
米企業への影響も大きい。ソフトバンクグループ傘下の米携帯子会社スプリントは17年10~12月期の最終損益が71億6200万ドルの黒字(前年同期は4億7900万ドルの赤字)だった。法人減税による繰り延べ税金負債の取り崩しが71億ドルの利益押し上げ効果を生んだ。米フォードは14億ドルの増益要因になった。
繰り延べ税金負債・資産の取り崩しは資金の出入りを伴わず、本業の収益には影響しない。もっとも中期的には米国に進出する日本企業にとって法人減税メリットは大きい。さらに法人減税が米景気を底上げし、「日本からの輸出が増える」(野村証券の松浦寿雄氏)との見方もある。株式市場の動揺が収まれば、法人減税をテーマにした投資が注目される機会は増えそうだ。
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