2018年10月22日(月)

医療データ、患者が知る時代へ

The Economist
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2018/2/7 2:30
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「Patient(=患者、忍耐強いという意味もある)」は、絶妙な言葉だ。先進国で病院へ行くとなったら、そこで何が待ち受けているかは誰でも分かる。あれこれ診察する医者に延々と続く検査、飛び交う不可解な専門用語、高騰し続ける医療費、そしてあの長い待ち時間だ。医療は複雑であり、注意深さが肝要なので、ある程度の忍耐が求められるのは仕方がない。しかし、患者たちの堪忍袋の緒はもはや切れそうだ。

ネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コムと米投資会社バークシャー・ハザウェイ、米銀最大手JPモルガン・チェースの3社は1月30日、より良質で安価な医療を従業員に提供することを目的とした新会社を立ち上げると発表した。現行の医療制度の根本的な問題は、患者が知識と主導権を持っていないことにある。だが、患者が医療データにアクセスできるようになれば、その両方を手にすることができる。

患者は既にインターネット上では、好きな時に好きな場所で診察を受けることができる。市販の検査サービスを利用すれば、自分の血液を分析したり、ゲノム配列を解析したり、胃腸の細菌を調べたりできる。それでも今、病院から患者へ、医師からデータへと力点をさらに移す根本的な変化が求められている。

■スマホスワイプで認知機能の低下予測も

実際にその転換は起きつつある。今やスマートフォン(スマホ)などの技術により、自らの健康状態を確認することが可能だ。いまだに自分の診療記録にアクセスしたり、信頼できる相手と医療情報を簡単に共有したりする手段は確保されていないが、これら不可欠な要素が加われば可能性はさらに開ける。そうなれば自分の治療における無駄を減らせる上、医療関連のアルゴリズムの学習に役立つデータをもっと提供することもできる。自分の健康管理だけでなく、すべての人の健康管理をも改善できるようになる。

データが医療革命の起爆剤になるとは思えないかもしれない。だが、様々な医療関連の情報を収集し、共有を促進すれば、複数の成果が得られそうだ。1つは、より正確な診断につながるという点だ。心臓に不安があれば、不整脈を検知してくれる医療用の腕時計型機器を購入すればいい。現在、皮膚がんから脳振盪(しんとう)、パーキンソン病に至るまで、様々な疾患を診断するためのアプリを開発しようと各社が競い合っている。

また、採血せずに汗を分析するだけで様々なバイオマーカー(体の状態を客観的に測定・評価する指標)を発見するための研究も進んでいる。なかには、スマホの画面をスワイプする速度の変化から、認知機能の低下を予測することを目指す研究もある。

膨大な医療データを簡単に入手できるようになる第2の利点は、複雑な病気の管理にも役立つことだ。例えば、糖尿病患者向けのアプリは、血糖値や食物摂取を記録することで患者に自己管理を促すので、失明や壊疽(えそ)といった糖尿病による長期的な障害を防ぐことにつながるかもしれない。スタートアップ企業の米アキリ・インタラクティブは、注意欠如・多動性障害(ADHD)に関係しているとされる脳の部分を刺激するゲームを開発し、規制当局の認可を申請する予定だという(編集注、薬を摂取するよりいいという考え方と思われる)。

さらに、患者は自分が受ける医療の効率を高めることもできる。診療記録の電子化が進んでいるとはいえ、情報がたこつぼ化していることも多いし、コンピューターで読み取れないデータもまだ多く存在する。こうした理由から処置が遅れたり、最悪の結果に至ったりするケースがある。米国では毎年25万人が医療ミスで死亡しているとされ、その原因の大部分は様々な治療や組織の間の調整ができていないことにあるという。

■データ共有による落とし穴も

データが手元にあり、それを共有するための基準が確立していれば、患者には正しい診断を追求する強い動機があるので、間違いを発見できる見込みは高まる。米アップルは1月24日、患者がスマホを利用して自分の診療記録をダウンロードすることを認めるよう医療機関に要請する計画を明らかにした。

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