2018年10月19日(金)

「五反田で何が悪い」 渋谷に背を向ける起業家たち

コラム(ビジネス)
スタートアップ
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2018/2/7 6:30
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■ブランドイメージより実利

トレタの中村仁社長

トレタの中村仁社長

五反田はトレタ中村社長(パナソニック)、ココナラ南社長(住友銀行)など大企業出身の30~40代の起業家が集まるのも特徴だ。街のブランドよりも、交通の便がよく社員が通勤しやすい「実利」を優先しているからかも知れない。

東海道新幹線の品川駅まで2駅で、羽田空港にも出やすい。五反田駅に乗り入れる東急池上線と都営浅草線の沿線は、居住地としてお得な物件も多い。「徒歩圏の不動前駅や大崎駅を使えば、神奈川・埼玉方面から通勤も可能」(南社長)で社員の満足度も高い。

五反田には技術系スタートアップも集まる。典型がクラウド型カメラを手がけるセーフィー。創業メンバーはソニーグループ出身者がそろう。

ココナラの南章行社長

ココナラの南章行社長

佐渡島隆平社長(38)は「物件を探す時間がなく土地勘があった五反田を選んだ」と14年の創業時を振り返る。その後も愛着のある五反田で移転と増床を繰り返す。かつて近くにあった「ソニー村」の名残がスタートアップに受け継がれる。

ただ、近年は卒業組も増えてきた。五反田で育ち、新規株式公開(IPO)したオイシックスドット大地、ガイアックスなどだ。勢いのある未上場組の卒業も続く。1月にファッション関連のヴァシリーがスタートトゥデイの傘下入りに合わせて表参道に移転。遺伝子検査のジーンクエストが2月中旬、スマートロックのフォトシンスが3月に街を出て行く。

フォトシンスの河瀬航大社長(29)は「いつか戻りたい」と五反田への思い入れは人一倍。14年の起業前も含め、計7年にわたり「職住が近く、満員電車に乗らなくていい」五反田で働き続けた。

フリーの佐々木大輔社長

フリーの佐々木大輔社長

そんな河瀬社長が街を去る理由は「五反田100坪の壁」。社員数が70人に達し88坪(約290平方メートル)の現本社は手狭になった。周辺は大型ビルが少なく、新規供給も限定的。ワンフロア100坪以上は先行組が押さえ、新興勢力が成長後も残るのが難しくなった。

一方、仮想現実(VR)、チャットボットなど大きなオフィスを要しない新業種は続々と集まってくる。「雑多な中から新しい価値が生まれる街」(トレタの中村社長)への歩みは途切れない。

4年前に本社を五反田に構え、起業家の間では街の「顔」になりつつある会計ソフト、フリーの佐々木大輔社長(37)は語る。「ソニーを中心に五反田はかつて製造業の聖地だった。それが新産業の街に変わり、スタートアップの地になるのは日本の産業構造が変わっていく象徴かもしれない」

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