EV投資、中国が主戦場 日産は5年で1兆円
日産自動車の中国合弁は5日、生産能力増強や電気自動車(EV)などの開発に5年間で600億元(約1兆円)を投資すると発表した。25年までに中国で電動化に100億ユーロ(約1兆4000億円)を投じると発表した独フォルクスワーゲン(VW)と並ぶ大型投資となる。EVで先行する現地メーカーに対抗するため、自動車大手による中国での電動化投資が一段と活発になってきた。

「今ほど中国のビジネスを行うことがわくわくする時代はない」――。日産と東風汽車集団の合弁会社で総裁を務める日産の関潤専務執行役員は5日に北京市で開いた記者会見で、中国市場への期待をこう表現した。
22年までに発売する40車種以上の新車のうち、20車種以上をEVまたはエンジンで発電しモーターで駆動する車種にする。販売台数に占める電動車の比率は22年に3割に達する見通しだ。
1兆円の内訳は明らかにしていないが、モーターなど電動車の基幹部品の工場を建設するほか、新たな完成車工場建設の検討にも着手しており、「今年末までに判断する」(関氏)という。
日産は17年の販売台数が16年比12%増の152万台に伸び、韓国・現代自動車を抜いてVWや米ゼネラル・モーターズ(GM)に次ぐ中国3位に浮上。22年までの中期経営計画では、新車販売台数を17年比べ約100万台増の260万台とする目標を掲げた。
中国では自動車メーカーに一定割合のEVなどの生産と販売を義務付ける「NEV」規制が19年に始まる。中国のEV市場ではBYD(比亜迪)など現地メーカーが台頭しており、日産も短期間に投資を集中させることで市場で主導権を握る考えだ。
17年に中国で418万台を販売しシェア首位のVWは25年までに中国におけるEVやプラグインハイブリッド車(PHV)などの生産・開発に100億ユーロを投資すると表明。約40車種のEVやPHVなどを現地生産し25年までに年間150万台のEVを販売する計画だ。
VWは中国で3社目となる合弁を中堅メーカーと設立し、18年からEVの生産を始める。VWの中国事業トップのヨッヘム・ハイツマン取締役は「中国でのVWの強みの上に電動化や自動運転といった新しい資産を着実に築き上げる」と話す。
17年に中国で404万台を販売しシェア2位の米GMも高級車「キャデラック」など複数のEVを中国に投入するほか、20年までに開発予定の10車種以上のEVや燃料電池車(FCV)については中国でも販売するとみられる。
稼ぎ頭の米国の新車販売が頭打ちとなるなか、日本車各社も中国市場への依存を強めている。トヨタ自動車は18年に中国で前年比8.5%増となる140万台を販売する計画で、20年には独自開発のEVを投入する計画。
17年に中国で過去最高の145万台を販売したホンダも19年前半に中国6番目となる新工場を稼働させる。投資額は約30億元で、EVやPHVなどの電動車両の生産も見込んでいる。
中国汽車工業協会が発表した17年の新車販売台数は16年実績比で3%増の2887万8900台と小幅な伸びにとどまった。日産の関氏は低成長は小型車減税の縮小による一過性のものだといい、「今後2~3年の成長率は6%前後を見込んでいる」と話す。
中国では急ピッチで強化される環境規制に加え、地方部を中心になお旺盛とされる新車需要も、自動車メーカーの投資を呼び込んでいる。