2018年11月21日(水)

「本が帰ってこない」悩む公立図書館

2018/2/5 14:32
保存
共有
印刷
その他

貸し出した本が戻ってこない「未返却本」への対応に公立図書館が頭を悩ませている。督促はがきを送る費用や手間もばかにならず、東京都足立区は17年度までの2年間で、約2万冊分の返却を断念した。公立図書館は延滞料を科すこともできず、モラル頼みなのが現状だ。

返却期限を守るよう呼び掛けるポスター(東京都足立区の区立中央図書館)

「返還の見込みが薄い利用者への対応を続けても……」。東京都足立区は2016年、長期未返却の本について返還請求権を放棄した。10年以上返却されなかった本などが対象で、その数約1万9千冊。価格は総額約2500万円、2万円以上の本も7冊含まれていた。17年度も約2千冊の権利を放棄した。

督促はがきを送ってきたが、費用や手間がかかる割に効果が薄く、苦渋の決断に踏み切った。代わって未返却期間が比較的短い利用者への督促を強化。業者に委託し、一軒一軒戸別訪問を行っている。4割ほどが戻ってきたという。

新宿区も区立11図書館の未返却本が、15年度までの4年間で4502冊に上る。絶版になった貴重な書籍や他の自治体から借りた本などは職員が直接訪問して返却を求めているが、16年度に回収できたのは19冊にとどまる。

図書が返却されない理由は様々だ。返し忘れや返したつもりになっていたケースが大半だが、入院や急な転居で連絡がとれなくなる人もいる。

督促ははがきが一般的だが、費用負担は重い。埼玉県川口市では16年度に約1万7千枚を送り、約84万円がかかった。過去5年間では500万円に達する。戸別訪問ははがきより効果が高いとはいえ費用もかかる。足立区は16、17年度の2年間で計210万円かかった。

川口市立図書館の担当者は「はがきを送る費用がなくなれば、もっと図書館のサービスや蔵書の充実が図れる。本は共有財産という意識を持ってほしい」と訴える。日本図書館協会によると未返却本の存在は図書館共通の悩みという。

海外では延滞料を科すことで未返却を防ぐ国もある。桃山学院大学の山本順一教授(図書館情報学)によると、米国では多くの図書館が1日当たり一冊1ドル未満の延滞料を徴収しており、未返却が問題になることはないという。

ただ日本の図書館法は「入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価も徴収してはならない」と規定しており、延滞料制度の導入は難しい。山本教授は「海外では健全な運営のための負担を課すことでルールを守らせている。日本でも導入を考えてはどうか」と提案する。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報