2018年5月23日(水)

「孫」「美人」が心動かす ロボット身近に(熱撮西風)

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2018/2/6 2:00
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 「可愛らしさ」が認知症の高齢者を豊かな表情に変え、「美しさ」が男性に恋愛感情を抱かせる。大阪大学の石黒浩教授が研究するヒト型ロボットが人間社会に入り始めた。その優れた機能を使いこなせば、やがて人間は能力を高めるという。

 「人間は生身では何もできない。機械化することで進化する」。原始時代は火とヤリを使い、現代もスマートフォンやパソコン、自動車といった新技術を取り込んできた人類。ロボットも進化の新たな原動力だ。その萌芽(ほうが)はすでに見えつつある。

 「おばあちゃん、高い高いして」「いいよー」――。宮城県名取市の特別養護老人ホームうらやすが昨年1月、全国で初めて導入した小型ロボット「テレノイド」。認知症の高齢者に抱きかかえられ、職員も見たことがない豊かな表情を引き出す。作業療法士は「十分に見ていたつもりだったのに、知らなかった入居者の素顔に驚かされる」と舌を巻く。大阪市と兵庫県尼崎市の施設も今春の導入を決めた。

特別養護老人ホームで高齢者と話す「テレノイド」。職員が遠隔操作し内蔵マイクで会話する

特別養護老人ホームで高齢者と話す「テレノイド」。職員が遠隔操作し内蔵マイクで会話する

個性のない顔立ちのテレノイドは、孫や子など親しい人を投影できる。車いすの女性が満面の笑みを浮かべた

個性のない顔立ちのテレノイドは、孫や子など親しい人を投影できる。車いすの女性が満面の笑みを浮かべた

 視線や表情を変えながら愛らしく首を傾けるのは美人ロボット「エリカ」だ。話すうちに男性は恋愛感情を抱く。ロボット開発で、次の段階は自ら考える「意識」を持つこと。もしエリカが記録した言葉だけでなく意図や好みを理解したように振る舞えば、心を感じるロボットになる。人間は動物と違い意図を介して他者を思いやり、そして愛する。ロボットはさらに身近な存在となり、人間社会に深く入り込む。

美人ロボット「エリカ」(京都府精華町)=開発:ERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト

美人ロボット「エリカ」(京都府精華町)=開発:ERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクト

人間にそっくりで対話も自然にできる

人間にそっくりで対話も自然にできる

 ロボットや人工知能(AI)が人間の仕事を奪うという議論が盛んだ。これに対して石黒教授は「技術を使いこなす人と技術に使われる人。人間は二極化する」と手厳しい。社会のマニュアル化が進み、自らの頭で考えない人が増えている。人間が人間らしさを失っている現代。十分な教育を受けて技術を使いこなさないと、技術に使われる人になる。「考える人」。これが生き残る道だ。

 ロボットが社会に活躍する時代。その先に人間の進化が見えてくる。

(大阪経済部 竹下敦宣、大阪写真部 浦田晃之介、淡嶋健人)

石黒浩大阪大学教授(左)と自身をモデルにしたロボット(大阪府豊中市)

石黒浩大阪大学教授(左)と自身をモデルにしたロボット(大阪府豊中市)

手の造形も精巧だ(下は石黒教授の手)

手の造形も精巧だ(下は石黒教授の手)

ロボット研究を通じて人間の本質を解き明かす石黒教授の挑戦は続く

ロボット研究を通じて人間の本質を解き明かす石黒教授の挑戦は続く

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