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米で利上げ加速論 パウエルFRB議長、3日始動

【ワシントン=河浪武史、ニューヨーク=大塚節雄】米連邦準備理事会(FRB)は3日、パウエル次期議長を中心とする新体制に移行する。資産価格の高騰と物価の停滞という相反する難題が残るなか、大型減税などで米景気は上振れ観測があり、利上げペースの加速も課題となる。財政赤字の拡大に伴う米国債の需給悪化への懸念から長期金利の上昇に拍車がかかっており、新体制は難しい船出を迫られる。

FRBはパウエル次期議長が3日付で米連邦公開市場委員会(FOMC)の議長となり、新体制に事実上移行する。パウエル氏は5日の宣誓式を経て第16代のFRB議長として正式に就任する。

パウエル氏も参加した1月31日のFOMCでは、利上げ加速の可能性を議論したもようだ。会合後の声明文では、伸び悩んでいた物価について「今年は上向くだろう」と断言し、金融政策も「さらなる段階的な利上げ」を予告した。「さらなる」との文言は今回付け加えられ、年3回としていた利上げ回数が上振れする可能性が出てきた。

同日の米長期金利は一時2.75%とほぼ3年10カ月ぶりの水準に上昇した。利上げペースが速まるとの見方に加え、米国債の需給悪化への懸念がくすぶる。

米財務省が同日発表した計画によると、2~4月に米国債の発行を計420億ドル(4.6兆円)増やす。10年債、30年債を含めて幅広い年限で発行が増え、長期金利の基準となる10年債は月10億ドルずつの増発となる計算だ。事前には10年債の発行額は据え置くとの予想があっただけに、一時的に売りがかさんだ。

FRBは過去の量的緩和で大量に買った米国債を段階的に縮小しており、市場が消化しなければならない金額は増える。さらに米議会が成立させた10年で1.5兆ドルの大型減税ものしかかる。パウエル氏はまず、神経質な動きを見せ始めた市場と向き合う必要がある。

法律家としてウォール街で経験を積んだパウエル氏は2012年から理事を務めてきた。イエレン議長の政策判断に反対票を投じたことはなく、市場はイエレン氏と同じ「ハト派」とみてきた。

もっとも、パウエル氏を知る中銀首脳OBは「同氏は金融理論に偏らない現実派」という。昨年11月の米議会の指名公聴会でも「インフレが予測より低いと判断すれば(利上げペースを)緩めるし(逆なら)速めることもある」と強調した。

物価上昇率は直近でも1.7%と目標の2%に届かないが、米経済は完全雇用状態にある。大型減税など財政刺激策で賃上げ圧力がさらに強まり、景気が想定以上に過熱する可能性がある。それがFOMCで利上げ加速論が浮上する背景だ。

金融市場にも行き過ぎ懸念があり、グリーンスパン元FRB議長は「株式市場と債券市場はバブルだ」と指摘する。市場参加者は「18年の利上げ回数は4回」(ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏)と引き締め加速を織り込み始めた。

側近への"口撃"も辞さないトランプ大統領も壁の一つだ。同氏は「低金利人間だ」と自称する。新議長にパウエル氏を選んだのは、利上げに慎重な「ハト派」とみなしたため。トランプ政権の景気刺激策をFRBが利上げで冷やすちぐはぐな動きになる恐れもある。

米景気は拡大局面が9年目を迎え、持続力が問われる。利上げを急ぎすぎれば、FRBが自ら景気の腰を折りかねない。政策金利は今なお1.25~1.50%で、景気後退局面での利下げ余地も乏しい。エコノミストでないFRB議長は約40年ぶり。足元の経済環境はイエレン氏も「ミステリー」と評した。新体制はいきなり難路で始まる。

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