2019年6月21日(金)

鈍足は返上、110億円の即決枠 パナのCVC

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2018/2/4 6:30
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110億円を使って思うように投資してみろ――。パナソニックは米国のスタートアップ企業投資の担当者にこんな発破をかけている。本社に「お伺い」している間に、いい案件を他社にさらわれるのが米国における日本企業のスタートアップ投資の悪弊だった。パナソニックはそこから一歩抜け出した。だが、国際標準でみればスタート台に立ったにすぎない。

「お金に困っているわけじゃないんだ」

「いまOKするからどうだ」

2017年8月、半ば押し売りのような格好で決まった交渉。これをまとめたのがパナソニックベンチャーズの木下雅博社長だ。シリコンバレーにオフィスを構える同社は、パナソニックのグループ会社で、米国のスタートアップに投資するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)だ。17年4月の設立で、110億円の投資枠を持つ。

■現地でスカウト

パナソニックベンチャーズの木下社長(左から2人目)と外国人キャピタリストら

パナソニックベンチャーズの木下社長(左から2人目)と外国人キャピタリストら

木下社長が即断で投資を決めたのがデスクトップメタルだ。ボストン近郊にあるこの会社は、デスクトップパソコンよりもやや大きいくらいの3Dプリンターを開発している。一般的な3Dプリンターの半分以下のサイズだ。

「絶対にいい会社だから一度見に行ってくれ」。交渉前、木下社長は同僚のポール・イェー氏にこう言われていた。

イェー氏は米国の有力VC出身で、シリコンバレーで約15年間、スタートアップ投資に携わってきた。パナソニックは彼の経験や人脈を買い、パナソニックベンチャーズにスカウトした。

イェー氏の言葉に押されてデスクトップメタルを訪れた木下社長。通常の日本企業のCVCのトップであれば「まずは本社で検討するので時間がほしい」と「待った」をかけるところだが、パナソニックベンチャーズは即断即決だ。

こうした日本企業らしからぬ姿勢がイェー氏のような「シリコンバレーに深く入り込んでいる人物」(木下社長)を引き寄せる。米インテルのCVC、インテルキャピタルからも経験豊富な人材がパナソニックベンチャーズに来ており、有力なスタートアップの情報が集まるようになった。

木下社長も異色の経歴を持つ。大手商社や監査法人で働いた後、旧三洋電機に入社。三洋電機では、パナソニックと経営統合するときの交渉担当者を務めた。パナソニック入社後はM&A(合併・買収)の担当として、ヘルスケア事業売却などを手がけた。

「今度は売り上げを伸ばす仕事がしたい」。こう考えた木下氏は、13年秋にシリコンバレーに渡り、有望なスタートアップを探した。だが「山ほど企業があり、どこに投資していいかわからなかった」。14年に津賀一宏社長に「投資枠を設けてほしい」と直談判し、パナソニックベンチャーズ設立にこぎつけた。

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