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中国の人気仮想通貨が落とす影 ビットコインに下落リスク

仮想通貨市場を巡って、海外で新たな火種がくすぶっている。火元は中国で人気のある仮想通貨「Tether(テザー)」。ビットコインなどとは違ってレートが米ドルに固定されているのが特徴だが、裏付けとなるドル資産を持っていないとの疑惑が浮上している。テザーは当局が仮想通貨取引を規制している中国の投資家が仮想通貨を売買するための「抜け道」に使われることが多いとされ、中国人の人気を集めていた。テザーの信用が失われるような事態に発展すれば、仮想通貨市場に流れるチャイナマネーが細る可能性がある。ビットコインなどへの影響も必至だ。

1月31日、テザーを発行する企業に不正の疑いがあるとして米商品先物取引委員会(CFTC)が調査していると伝わった。海外メディアによれば、CFTCは仮想通貨テザーを発行する企業(企業名=テザー)と仮想通貨取引所大手のビットフィネックスに対し、2017年12月6日に召喚状を送付したという。両社はともに香港に拠点があり、経営者は同じだ。

テザーに関してはこれまでも多くの疑惑や不祥事があった。17年4月には銀行との関係が絶たれ、一時的に出金ができなくなった。同11月には外部からハッキング攻撃を受けて3000万ドル強(約31億円)が盗まれた。最近では監査会社との関係を解消していたことが指摘され、内部管理体制も疑問視されていた。

CFTCが調査しているとされるのが、テザー社が十分な資産を持っていない可能性だ。テザー社は仮想通貨テザーを保有する投資家から換金要請があれば、同額のドルを送付しなければならない。1月31日時点で仮想通貨テザーは約22億ドル(約2400億円)相当が発行されており、理論上は同程度のドルを持っている必要がある。万が一、不足していれば換金要請に応えることができないため、投資家は損失を被る。

日本ではさほどなじみはないが、中国では仮想通貨テザーはビットコイン同様に人気がある。その理由を探ると、中国の投資家が他の仮想通貨を売買するのに欠かせないツールになっていることが分かった。

中国政府は資本流出を防ぐため、海外送金や外貨両替に対する規制を繰り返し強化してきた。その一環で、中国政府は17年秋に国内の仮想通貨取引所を閉鎖した。中国の投資家が仮想通貨を売買するには海外の取引所を使わざるを得なくなった。

ただ、海外取引所の利用も簡単ではない。そこで生み出されたのがテザーを使った「抜け道」だ。仮想通貨に詳しい大和総研の矢作大祐氏によると、香港や韓国の取引所で一旦テザーを買い、それをビットコインなどに替えれば、当局の目を盗んで他の仮想通貨が売買できるという。テザーはレートが米ドルに固定されているため価格変動が小さく、投機性が小さいとして当局からにらまれにくい。取引方法も個人と取引所との相対取引を用い、記録が残らない手段が取られているようだ。

「テザーのほとんどは、抜け道のための売買」。香港の仮想通貨取引所を運営するゲートコインの事業責任者、トーマス・グラックスマン氏はこう証言する。同社はテザーを取り扱っていないが、一部の取引所は抜け道の売買を受け付けているという。16年末に700万ドル程度だったテザーの発行量は今や30倍超に増えた。数々の問題を抱えながらも発行を続けられたのは、中国の投資家の売買ニーズがあったからだ。

チャイナマネーが仮想通貨市場に流入するために、仮想通貨テザーは今や欠かせないインフラになっているようだ。カリフォルニア大学のニコラル・ウェーバー研究員は「ビットコインには1日に1億ドルの資金がテザー経由で流入している可能性がある」と分析する。

中国政府が規制を強化して以降、ビットコインの人民元建ての取引は縮小を続けている。情報サイトのコインヒルズによると、17年秋までは2割程度だった人民元建て取引が、現在はゼロになっている。だが、それはあくまで表向き。実際には仮想通貨テザーに姿を変え、人民元は今も市場に流入し続けているわけだ。

CFTCによる調査でテザー社が十分な資産を保有していないと明らかになれば、仮想通貨テザーの信認は失墜し、投資家は売買に使わなくなる。そうなれば人民元の抜け道も絶たれてしまう。ウェーバー氏は「(そうなれば)仮想通貨は大暴落する」と警告している。

ビットコインは1月31日未明に節目となる1万ドルを約1週間ぶりに割り込んだ。コインチェック以上の危機に投資家は備え始めている。

(栗原健太)

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