2018年11月18日(日)

ドローン 次の舞台は海

スタートアップ
2018/2/1 12:30
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空の産業革命と呼ばれ、物流や農業など幅広い分野で導入され始めたドローン(小型無人機)。だが、縦横無尽に駆けるのはもはや空だけではない。日本や中国のメーカーが水中ドローンを開発し、性能を競い合う。海洋大国の日本では堤防などインフラの点検から個人の魚釣りまで考えられる用途は広い。

トライポッドファインダーは4時間持つバッテリーを積み、水深300メートルまで潜る

トライポッドファインダーは4時間持つバッテリーを積み、水深300メートルまで潜る

「海中を調べたくても費用が高くて手が出せない現状を打破したい」。筑波大学発スタートアップ、空間知能化研究所(茨城県つくば市)の伊藤昌平社長は水中ドローンを開発する意義を語る。

6月から事業の第1弾としてレンタルを始める。想定している用途は主にダムや防波堤、海底ケーブルなどインフラの点検だ。すでに使いたいとの要望が寄せられている。ズーム機能の高いカメラをつけたり、土壌を採取するアームをつけたりと企業の要望に応えることもできる。

インフラ点検には無人潜水機(ROV)が使われている。ただ伊藤社長は「1台500万円以上かかる」と話す。ROVを使わない場合、ダイバーに依頼する。同社が開発中の「トライポッドファインダー」のレンタル料は1日20万円前後となる見込みだ。

ROVは免許が必要なわけではないが、空のドローンのような操縦士の認定制度があり取得が推奨されている。これに対し、水中ドローンはゲームコントローラーを触るような直感的な感覚で操作できるとうたう。

トライポッドファインダーは幅40センチメートル、奥行き60センチ、高さ50センチの立方体。電気を有線で供給するROVと違い最大4時間持つバッテリーを積む。船上のコントロール機器と本体を光ファイバーでつないで操る。潜れる深さは300メートルある。

伊藤社長はトライポッドファインダーをあえてドローンと呼んでいる。実際、空のドローンと同じ点がいくつかある。

1つはプロペラで進むこと。左右と上部に計4つある。2つ目は加速度センサーなどで構成するMEMS(微小電子機械システム)センサーを使っていることで、機体の傾きをとらえている。

空間知能化研究所のドローンはフルハイビジョンで撮影できる

空間知能化研究所のドローンはフルハイビジョンで撮影できる

カメラ撮影がメイン機能である点も同じだ。高画質のフルハイビジョンカメラで写真、動画を撮影する。水中では深さによって塩分濃度が異なり光の屈折率が変わるため、それでも撮影対象に焦点を合わせられる技術を使っている。

空のドローンと最も違っている点は機体の位置の把握の方法だ。海は、空のように全地球測位システム(GPS)が使えないハンディがある。

同社が搭載を検討している独自の位置計測システムの要は音波だ。ドローンを放った船上から機体に音波を飛ばし、到達時間を計測して船と海中の機体との距離を割り出す。さらに機体の3カ所に集音マイクを設けると、微妙な音波の到達時間の変化から進んでいる方角もわかる。これらに画像センサーを組み合わせ位置を把握する。

同社は2014年に設立された。筑波大でロボットを研究していた伊藤社長は最初、深海生物を見る機械を趣味で製作しようと考えていた。事業としてスタートさせたあと、海洋生物の専門家がROVの使いにくさを話しているのを聞き、手が届きやすいものを作ろうと思いを強くした。

水中ドローンは海外メーカーが先行している。09年設立の中国パワービジョンは17年夏、日本で小さな宇宙船のような小型機「パワーレイ」を発売した。動画を撮影でき、スマートフォンで動かせる。本体価格は30万円を切り、17年は世界で5万台以上販売された。

個人の利用を想定しており進める深度は30メートル。例えば、搭載されている魚群探知機を使い、餌をぶら下げて魚の群れに近づく魚釣りを楽しむような利用方法がある。水族館の水槽の点検などにも使われているが、産業用途をメインと考える空間知能化研究所の機体とは顧客層が違ってくる。

空のドローンの世界最大手、中国DJIの正規販売代理店であるセキド(東京都国立市、大下貴之社長)は米ブルーロボティクス製の水中用機種を扱う。こちらも深度は100メートルまでと空間知能化研究所より浅い。船底の傷を確認する用途などで売り込んでいる。

中国パワービジョン製品を販売するスカイウィングス(東京・新宿、入江衣代社長)は、空と水中のドローンの25年の世界需要が16年の5倍の1200万台になると予想する。農林水産用途の割合は16年の1%から13%に高まり、そうした用途の中で水中ドローンが活躍する場も広がるとみられている。

空と違い、水中ドローンを巡る規制は今のところほとんどない。だが実際に利用していく上では、海で漁船とすれ違う際のルールやテロに使われないような仕組みが欠かせない。普及するには産官一体の環境整備も不可欠となる。

(企業報道部 池下祐磨)

[日経産業新聞2018年2月1日付]

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