2019年5月24日(金)

核酸医薬、主役となるか
WAVE(成田宏紀氏)

2018/2/1 6:30
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バイオテクノロジーの存在感は増す一方であり、人々の生活を変えつつある。本稿では、忙しい読者諸氏も「通勤電車でバイオ通」になれることを目指して最先端バイオテクノロジーを紹介していきたい。

2000年エヌ・アイ・エフベンチャーズ(現・大和企業投資)に入社し、11年投資第一部副部長兼VC投資第四課長。14年5月、DCIパートナーズ社長就任。

バイオテクノロジーの躍進は華々しく、一般の人にも身近なものになりつつある。本稿では、忙しい読者諸氏も「3分でバイオ通」になれることを目指して最先端バイオテクノロジーを紹介していきたい。

DNAという言葉は誰もが知っている時代となったが、このDNAとその親戚を医薬品に応用しようという試みがある。「核酸医薬」である。そして、この核酸医薬は次世代バイオ医薬の有力な主役候補なのである。

核酸とは遺伝子をつかさどる物質であり、DNAはその一種である。DNAは遺伝子を保管しているのだが、細胞内ではその情報が頻繁に読み出されて利用されている。そのプロセスを調節することで、疾患を治療しようという試みが核酸医薬である。

核酸医薬では、疾患の原因となる遺伝子が判明すると、医薬候補物質のめどを立てることは大学生でもできてしまうほど、簡単なのである。従来の医薬品設計では、製薬会社の技術・ノウハウと大規模な資金力を要することを考えれば、革新的な技術なのである。

さらに、現代バイオ医薬の主役である「抗体医薬」が治療できない疾患を治療できる点、理論上、抗体医薬の10分の1程度で製造できるとされる点などから、次世代の主役と目されている。ちなみに、医療費の膨張が問題となっているが、抗体医薬の高額な製造コストも一因である。

そこまで言うなら、次世代の主役は決まりではないかと、ご指摘を受けそうだが、話はそう簡単ではない。

核酸医薬はその潜在力から、長く研究開発が取り組まれていたものの、いまだ5剤しか、販売にこぎつけていない。しかも、1剤は販売中止、1剤は競合の抗体医薬に押されている状況である。

筆者も核酸医薬の開発企業にかかわってきたが、実はなかなか製造コストが下がってくれない。さらに、投薬後体内で簡単に分解されてしまう、標的の遺伝子までうまく届かないなど、克服すべき課題が多く残っている。

課題は技術面だけではない。基本特許である。基盤技術に関する特許を米国のAlnylam社等数社が独占しており、国内大手製薬企業も100億円規模の技術使用料を支払っていたこともあった。製薬業界の参入を阻んでいた大きな原因の一つであるが、一方で知財ビジネスのお手本になっている。

このような中、独自の核酸技術と特許で善戦している企業が久留米にある。ボナックである。核酸にアミノ酸をつなげることで様々な課題の解決を試みている。

大学発ではなく、自社技術なのだが、核酸専門の先生ではなく、企業の研究者ならではの着眼点が勝因になったのかもしれない。住友化学も40億円を出資し、本格的に支援している。

さて、先ほどは5剤しかと悲観的なことを述べたが、実はそのうち2剤は2016年以降の販売である。さらにここ数年で続々と販売が予定されており、本格的な核酸医薬時代の幕開けとなるかもしれない。少なくとも、先述の課題を解決する企業は今は小粒でも、将来の大企業候補だろう。

核酸医薬が真の主役になるか、読者諸氏が歴史の証人になってほしい。

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