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スキーHP小野塚 「後ろ向き」で舞う

平昌へ メダルへの道

スキー・ハーフパイプの世界選手権女王、小野塚彩那(29、石打丸山ク)は平昌五輪に向けたキーワードに「後ろ向き」の滑りを掲げる。もちろん気の持ちようの話ではない。「スイッチ」と呼ばれる、後方に滑ったまま仕掛ける独特の技。その完成度が、自身のメダルの色を変えるとそろばんをはじく。

小野塚はアルペン競技や基礎スキーで培った滑りで技の完成度を高める=共同

新種目として採用されたソチ五輪で銅メダルを手にしてから4年。世界はパイプの両サイドで2回転半(900)の大技を組み込む高回転時代に入った。小野塚は安易にそこにくみしない。新たな技に取り組む時も「完成度が低ければ実戦では出さない」と姿勢は一貫している。武器は2011年に転向するまで続けたアルペン競技や基礎スキーで培った滑りだ。

スイッチはスキーの一般概念に反した滑りだ。並の選手ではバランスを崩したり、減速したりしがち。巧みなスキー操作を生かして板に乗り、ルーティン(技の構成)に2つも入れられる小野塚に一日の長がある。ソチ金のボーマン(米国)、銀のマルティノ(仏)を抑えて優勝した昨年3月の世界選手権も、このスイッチ技が認められた。

今、世界で最も派手な演技を見せるのがカナダの25歳、キャシー・シャープ(カナダ)。両サイドの2回転半にさらに縦回転の動きを入れ、今季ワールドカップ(W杯)2勝と台頭は急だ。一方で小野塚は飛び出しを磨いてスイッチの高さを出し、ジャンプ中に板をつかむ「グラブ」をきれいに見せる細かい部分を丹念に詰めてきた。

3Dのわかりやすい大技が主流になるなか、我が道を行く姿は「美しさ」を追求し、世界の頂点に立った日本の体操界にも通じる。そのいぶし銀の女王が大舞台での総仕上げにしたいのが最後のスイッチ技の回転を上げ、「900」とするルーティン。うまさとすごさを両立したこの技をモノにできれば「両サイドでの900と同じかそれ以上の評価を得られる」と読んでのことだ。

耐えうる体を作るため、軸の使い方や下半身の締めを鍛えてきた。ひねりと雪面とのコンタクトの衝撃はアルペン時代にはなかったもの。「転向当初はまだまだだったけれど、その能力は今は世界トップレベルに達している」と君島保裕トレーナー。「百発百中で決められないと技はやりたくない」という現実主義者が、満を持して勝負の一手を繰り出す準備は整いつつある。

昨年12月の米コロラド州コッパーマウンテンでのW杯予選で転倒、脳振とうを起こして続くプロ大会も出場できなかった。小さなつまずきはあったものの、年明けのW杯は表彰台にも戻ってきた。「場数は踏んでいるし、ファイナルで戦う気持ちはわかっているつもり」。前向きさを失わぬ強気をもう一つの武器として携え、白銀のパイプで華麗に舞う。

(西堀卓司)

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