優等生アステラス 再編の号砲ならすか

2018/1/31 17:53
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アステラス製薬は31日、安川健司副社長(57)が4月1日付で社長に昇格する人事を発表した。畑中好彦社長(60)は代表権のある会長に就く。旧藤沢薬品工業と旧山之内製薬の合併で誕生した同社。出身母体によらない人事や最大手をしのぐ業績から「統合会社の優等生」ともてはやされたが、海外勢の攻勢など対応すべき課題は多い。

「山藤製薬」「藤山製薬」。2005年の新会社設立に向け、最初にあがった社名の候補だ。「厚生労働省も日本的な名前にこだわった」(関係者)というが、結局、落ち着いたのが「アステラス製薬」。存続会社は山之内だったが、対等の精神でやるという決意を込め、全く新しい社名にしたという。

その精神は実際の人事にあらわれた。設立当初、藤沢出身の青木初夫会長、山之内出身の竹中登一社長という布陣でスタートを切った。始まりこそたすき掛けの布陣だったが、その後、野木森雅郁氏(06年就任)、畑中氏(11年就任)と藤沢出身者が2代続けて社長を務めたり、今回、12年ぶりに山之内出身の安川氏が社長に就いたりと、こだわりはない。

業績は好調だ。2018年3月期の連結最終利益予想は1800億円と、業界最大手で売上高が3割多い武田薬品工業を上回る。業界関係者はその理由の一つとして「適材適所で人事をしていること」をあげる。

アステラスの取締役は6人。うち、社内取締役は畑中氏と安川氏のわずか2人だ。また、相談役や顧問はおかず、社長・会長経験者など大物OBはいない。実際、元トップの青木氏や竹中氏らは医療ベンチャー企業の支援など、新しい仕事に集中している。

経営統合を経た企業がトップを含む人事や組織編成で混乱し、業績が思うように上向かない事例は枚挙にいとまがない。その一方、アステラスの場合、武田を上回る業績をあげたことで市場関係者からの評価は高い。

藤沢出身の畑中氏は臓器移植手術などの際に使う免疫抑制剤「プログラフ」の販売で名をあげ、冷静沈着な判断を下すことから、出身母体にかかわらず社内での支持層は厚いとされる。安川氏は畑中氏とともに経営計画の策定に携わり、気心は知れている。

世界を見渡すと、欧米製薬大手の巨額のM&A(合併・買収)が相次いでいる。この1月だけでも仏サノフィが立て続けに巨額買収を発表。合計で1兆5千億円を超える。米セルジーンによるベンチャー企業の買収も同規模だ。4月には国内の薬価制度が大きく変更になり、収益に影響が出るのは必至。もとより、出身母体を気にしている暇はない。

新社長となる安川氏はいったいどんな手腕をみせるのか。同社には胸につける会社のバッジすらない。「いつ会社が変わってもよいように備えているのは、次の統合の用意もあるということ」(市場関係者)。安川氏が業界再編の号砲を鳴らすかもしれない。

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