2018年2月22日(木)

受動喫煙対策、例外多く がん患者「効果出るのか」

関西
2018/1/30 21:33
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 厚生労働省が30日公表した受動喫煙対策は、既存の小規模な飲食店を条件付きで喫煙可能とした。多くの店舗で喫煙が認められる内容に、がん患者から効果に疑問の声が上がり、禁煙推進に取り組む人々は、五輪の開催を前に「国際的な流れに後れを取る」と批判する。規制から外れる可能性が高いとされるのは150平方メートル以下の店舗。既に厳しい対策を設けている自治体では条例見直しを模索する動きも出始めた。

分煙を実施している飲食店(30日、大阪市中央区)

 「厳しい規制を求めていたが、これで効果が出るだろうか」。日本肺がん患者連絡会代表の長谷川一男さん(47)は30日、今回明らかになった受動喫煙対策に疑問の声を上げた。

 厚労省が公表した素案は、個人や中小企業が経営する既存の小規模店について「喫煙」「分煙」と表示すれば喫煙可能とした。店舗面積の基準は検討中だが、150平方メートル以下が有力とされ、多くの飲食店では事実上、法改正後も喫煙が認められる見通しとなっている。

 長谷川さんは非喫煙者だが、2010年にステージ4の肺がんと診断された。喫煙者だった父親は肺がんで死亡。父親や、職場でさらされたたばこの煙が自身をむしばんだのではないか、という疑念を拭えないでいる。「受動喫煙が原因と断定できなくても、身近な人を疑ってしまう状況は耐えがたくつらい」という。

 治療しながら働くがん患者から「上司が喫煙するので我慢せざるをえない」という相談を受けることも。「がん患者にとって、たばこの煙は恐怖そのもの。有害なものをどう避けるかという現実的な視点で議論してほしい」と訴えた。

 約30年にわたり受動喫煙対策などの推進に関わってきた大阪市のNPO法人代表理事の野上浩志さん(69)は厚労省の素案について「飲食店の規制は海外と比べて不十分な内容。禁煙に向かう世界の潮流に乗り遅れてしまう」と批判した。

 現在の日本の受動喫煙対策は、世界保健機関(WHO)の基準で最低ランク。20年東京五輪・パラリンピックや大阪開催を目指す25年国際博覧会(万博)などが間近に迫るなか、「日本が国際基準に近づくには今が絶好の機会」とみる。

 同省は素案を基に健康増進法の改正案をまとめ、3月に国会提出したい考え。野上さんは「改正法の成立までには議論の時間がまだ残されている。実効性の高い規制となるよう、国会などへ働き掛けていきたい」と話す。

 受動喫煙対策を巡っては国に先立ち、兵庫県と神奈川県が条件付きで屋内を禁煙とする独自の条例を制定している。厚労省案は各条例の規制基準と整合しない可能性があり、自治体側の対応が必要になりそうだ。

 兵庫県が13年4月に施行した受動喫煙防止条例は、飲食スペースが100平方メートルを超える飲食店について禁煙または分煙とするよう義務付けている。国の法改正では150平方メートル以下の店に喫煙を認める案が有力。担当者は「法改正に合わせ、条例の内容を変えることを検討する」と話す。

 同様の条例がある神奈川県の担当者は「国の法改正には、まだ不確定な部分も多いが、国会などの議論を注視して対応を考えたい」としている。

飲食店は反応様々

 公表された健康増進法改正案の素案を巡り、大阪市内の飲食店では様々な反応が広がった。

 「規制が緩和される見通しとなり、正直ほっとした」と話すのは、中央区で喫茶店を営む男性(70)。厚労省が2017年3月に公表した規制強化案は今回の素案より厳しく、店は全面禁煙の対象になるはずだった。「客の半数は喫煙者。禁煙は時代の流れだが、客足が遠のくと心配だった」と胸をなで下ろす。

 市内で喫茶店を経営する女性(70)は「堂々と店内禁煙に切り替えるチャンスだったのに」と残念そう。開業以来、喫煙を認めてきた同店は、空調の清掃代などに毎月数万円かかるという。「法律で禁煙を推し進めてほしい」

 法改正の動きに関わらず、禁煙や分煙に取り組む店も少なくない。喫煙スペースを店内で分離している市内の飲食店の男性店長(26)は「たばこの煙を避ける志向は広がりつつある。国の規制強化に右往左往せず対応したい」と話した。

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