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クラウド調達額トップ10、男の仕事に小ぶりな相棒

17年下半期ランキング

日経産業新聞はインターネットを通じて不特定多数に資金を募る「クラウドファンディング(CF)」の2017年下半期(7~12月)の調達額ランキングをまとめた。コンパクトで持ち運べる物が上位に入った。効率良く快適に仕事をこなす「スマートワーク」に役立つと、30代以上の男性が支持した。

首位の「グラフィットバイク」は国内のCFで過去最高額を集めた。開発したファイントレーディングジャパン(和歌山市)はあまりの反響にglafit(グラフィット)という新会社を設立したほどだ。

ペダルでこぐ自転車と電動二輪の2つの乗り方ができる。折り畳め、重さは18キログラム。30~40代の男性が資金を提供した。

坂道などでは電動の補助が受けられ、通勤で使ってオフィスに置いたり営業の車に載せて出先の移動で使ったりと仕事用に求める人が意外に多い。CFで資金を調達した後、17年10月に15万円で自動車用品店「スーパーオートバックス」で販売を始めた。工場内の移動で購入する男性もいる。

「電車に持ち込んで移動先で乗りたい」との要望に応え、バイクを運ぶ専用トランクを2~3月に発売する計画。トランクも折り畳め、駅のコインロッカーに収まる。鳴海禎造社長は「バイクだけでなく、新しい移動手段を提供し続けたい」と話している。

移動先に持って行って使うのが2位の小型パソコン「GPDポケット」だ。画面は7インチで、本体の重さは約480グラム。ノートパソコンを一回り小さくしたような感じだ。

中国メーカー製の超小型パソコン「GPD Pocket」は2位

中国・深圳のGPDテクノロジーが開発した。電子部品商社のエム・シー・エム・ジャパン(MCM、東京・千代田、末松緑社長)がGPDに話を持ちかけ、日本での販売に向け「資金を集めたい」という話になった。

キーボードで入力でき、表計算やワープロのソフトが使える。MCMの深沢圭志氏は「廉価版のノートパソコンの最上位機種程度の性能はある。仕事に十分使える」と強調する。

40代の男性が主に支持した。タブレット(多機能携帯端末)よりもパソコンを使い慣れ、「iPhone」が普及するまで市場で一定の位置を占めた小型の「UMPC(ウルトラモバイルパソコン)」を知る世代だ。

仕事に直接使うだけでなく、職場での身だしなみを気にする男性の人気を集めたのが、4位のコニカミノルタの「クンクンボディ」。手のひらに収まる体臭の計測器だ。

手のひらに収まる大きさのコニカミノルタの「クンクンボディ」は4位

耳の後ろに20秒ほど当て、半導体ガスセンサーが臭いを検知する。スマートフォン(スマホ)のアプリに「汗臭」「加齢臭」「ミドル脂臭」のどの臭いが出ているかをそれぞれ10段階で示す。

新事業を企画する甲田大介氏が開発のリーダー役を務めた。夏場を前に体臭を気にする同僚の話がヒントになった。営業や接客の仕事をする男性らに使ってもらえるのではないかと考えた。

事務機が主力の同社には畑違いの商品なだけに「テストマーケティングの位置付け」でCFを使った。目標額は100台分の225万円。蓋を開けると、募集開始から2時間半で目標額を突破。反響を受けて29日から始めた一般販売では、主にエチケットに気を使う30代以上の男性の購入を狙っている。

 6位の「ZeTime(ジータイム)」も働く男の便利品。見た目はアナログ時計だが、タッチ画面を備え、交流サイト(SNS)やメールの着信を通知するスマートウオッチとしても使える。資金を募ったエバーシードマーケティング(山形県酒田市)の佐藤皓代表取締役は「従来のスマートウオッチの弱みを克服している」と話す。

6位のスイス製「ZeTime」はアナログの針を備えたスマートウオッチ

13年設立のスイスのブランド「マイクロノス」の製品。一定の時間がたってタッチ画面の表示が消えても実物の針で時刻を示す。約2時間の充電で最大30日間も使える。時刻が常に確認でき、仕事に役立つ点が受けた。公私でデザインが変えられるモデル「PREMIUM」が販売予定価格より2割安い2万5038円で手に入るコースに人気があった。

CFの募集期間は一般的に3カ月。クリスマスや正月までに商品を届けたいと、8月の募集開始から45日間に設定したが、3時間で目標の50万円を達成。資金提供者の大半が30~40代の男性だった。人気のため生産が遅れ、1月中にも発送する計画だ。今後は集まった資金で一般販売の準備を始めるという。

BCN総研(東京・千代田)の道越一郎チーフエグゼクティブアナリストは30代以上が活発に支持する背景を「CFでの商品購入にはリスクもあるので、収入がある程度安定してデジタル製品への感度が高い年代が中心になっている」とみる。

「外出先でかなりの機能がスマホで利用できるようになり、中途半端なモバイル機器は売れなくなっている。反響がなければ販売が見送れるCFでは思い切った商品を出しやすい」と指摘。「CFはコニカミノルタのような大企業も活用するようになってきた。新たな販売チャネルになりつつある」と話している。

(川上宗馬、山端宏実、高橋彩、阿曽村雄太)

周年記念、新しいファンつかむ

エンターテインメント系のコンテンツ制作は「周年記念」の作品だった点で共通する。

3位は恋愛アドベンチャーゲーム「リトルバスターズ!」の派生作品「クドわふたー」の劇場版を制作する企画。クドわふたーはリトルバスターズ!の登場人物「能美クドリャフカ」が主人公のゲームソフトだ。

目標額を超えたことを記念した「クドわふたー」の書き下ろしイラスト

ゲーム制作のビジュアルアーツ(大阪市)には「ファンからアニメ化を望む声が寄せられていた」。2017年にリトルバスターズ!が発売10周年を迎えるのを受けて企画が始まった。

クドわふたー関連のソフトは13年までに「プレイステーション・ポータブル」などに展開した。最後の商品から数年たち、「ファンがどれだけ残っているか」との不安からCFを使った。

書き下ろしのイラストや限定DVDなどを詰め込んだ40万円の高額コースは、用意した10人分が募集を始めた7月19日に即完売。6000万円の目標に対し、7804万円を調達した。劇場版アニメは19年秋の完成を予定している。目標を超えた額は作品の質の向上に使うという。

CFの担当者は「男女比や年齢などのリアルなデータが手に入った。マーケティングの面でも大きい」と話す。」 リトルバスターズ!を発売した当時のファンの中心は20代だったため、出資者は30代が多いと予想していたが、20代の男性が多かった。データは今後のシリーズの作品づくりなどに生かす。

国境を越えた販路に

 10位の緒方恵美さんはアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジ役などを務める。歌手活動もし、CDの収録曲は過去の出演作や関連の楽曲を選んだ。

目標の1000万円を大きく超える資金を調達した後、「日本のファンと同時に海外の皆さんにも正規品を届けたい」と、日本のアニメ関連商品を扱う米トーキョーオタクモードのCF「トーキョーミライモード」で海外に住む人から3万2000ドル(約350万円)超を集めた。

日本のアニメは海外でも人気があるが、CDやDVDの流通経路が少なく違法な配信や海賊版が横行する。海外のファンから彼女の楽曲や出演アニメの商品がどこで買えるのかとの質問を受けることが多いという。緒方さんは「この企画を踏み台に後輩の声優やシンガー、業界のみなさまが(通常のコンテンツ流通の仕組みにとらわれない)より自由な発想をもって『世界』とつながってくれたら」と、業界の海外発信に期待する。

CFは国境を越えた販路になりつつある。2位の「GPDポケット」は先行してCF大手の米インディーゴーゴーで350万ドル(約4億円)以上を調達し、日本人の応募も多かったという。

(広井洋一郎)

都心に「庭」、飲食店で最高額

飲食店を運営するジェイ・シルバー(東京・港)は2017年12月6日に開店した会員制レストラン「庭」(同・中央)で、マクアケでの飲食店の過去最高の資金と出資者を集めた。

室内庭園「テラリウム」が目玉(ジェイ・シルバーの白石社長)

照明を抑えて暗闇に映える室内庭園の「テラリウム」が都心で楽しめる空間が支持を得た。白石樹里社長は「開店前に顧客基盤をつくりたかったが、これほど集まるとは」と語る。

会員は5段階あり、来店回数に応じてランクが上がる。通常は一番下のランクから始まるが、CFへの出資者は数回分のコース料理を含む5千~10万円から出資額を選べ、額によってスタート時のランクが変わる。

銀座8丁目のビルの地下1階にあり、フランス料理の要素を入れた割烹(かっぽう)のコースを8500円から楽しめる。デートや接待で使う30~40代が多く、17年12月は全29席が満席で、同月末までに約500人が来店した。3回ほど来た人もいるという。

白石氏は別の会社で3軒の飲食店を経営するが、この店のために運営会社を設立した。マクアケのサイトの閲覧数は月に16万に上り、「広告宣伝にお金をかけずに認知度を高められた。2号店でもCFを活用したい」と話している。

(小田浩靖)

[日経産業新聞 1月31日付]

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