ゆうちょ銀「運用会社」へ かんぽと2月新会社発表
1200億円規模、試されるリスク管理力
ゆうちょ銀行は30日、かんぽ生命保険と手を組み、ベンチャー企業への投資を対象にした運用会社を2月に設立すると発表した。ゆうちょ銀はすでに地方のファンドを経由して中小企業に投資してきたが、今後はファンドの「運用者」として選別から積極的に関わっていく。低金利の逆風をはねのけ、運用会社への道を進もうと模索する。

「我々にむいているのではないか」。親会社の日本郵政の長門正貢社長は30日の記者会見でこう述べ、新会社設立の意気込みを語った。
2月9日に両社が出資して設ける「JPインベストメント」。組成する第1号ファンドにはゆうちょ銀が600億円、かんぽ生命が300億円を出し、日本郵政グループ外の投資家から300億円集めて1200億円規模にする。ベンチャーを中心に成長企業を投資先とする。国内外の有力ファンドと手を組み投資先探す考えも示した。
「『GP』を目指している」。ゆうちょ銀幹部が繰り返してきた言葉だ。GPとはファンドの運用者を意味する「ゼネラル・パートナー」の略。ゆうちょ銀は従来「LP(リミテッド・パートナー)」として地銀が作る地域ファンドの出資者の一員ではあった。地域創生には貢献できるが、収益への貢献はまだ小さい。
まとまった額での投資ができるGPを目指し、若手社員を地銀が組成するファンドに派遣するなど運用手法を研究してきた。こうして生まれたのが今回の運用会社だ。
ベンチャー出資へと向かわせた背景には、住宅ローンや企業向けなどの融資は規制で手掛けられないことがある。金融庁に認可申請を出し続けてきたが「民業圧迫」の声には逆らえず、17年3月に認可申請を取り下げた。200兆円規模の総資産を持つ同社にとって、運用の高度化や多様化でリターンを得るという選択肢だけが残った。
実際、ゆうちょ銀は代替投資の残高を増やし、17年9月は8360億円と半年で2千億円超増やした。これを約5年で6兆円にする目標もある。
ベンチャー投資に進むゆうちょ銀。課題はリスクをどう制御するかだ。積極的な運用へのシフトで14年3月末に57%あった自己資本比率は17年9月末で20%を割った。健全性に問題はないがリスク資産への傾斜は急だ。ベンチャー投資は5~10年たってから果実にありつける。運用の長期化はリスクに跳ね返る。
ゆうちょ銀には投資先の成長性を見極める力はますます求められる。貯金獲得に汗をかいてきたこれまでの歴史とは別次元のノウハウ蓄積が欠かせない。「最終的には純粋な運用会社として生き残っていくしか道はない」。ある郵政グループOBはこう語るが、道は決して平たんでない。