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ジャンプ高梨 リベンジへ「諦めない」

平昌へ メダルへの道

達観か泰然か。高梨沙羅(21、クラレ)は落ち着いている。

今季開幕からワールドカップ(W杯)個人10戦未勝利。28日のW杯スロベニア大会も4位に終わった。五輪シーズンに「まさか」の事態を迎えているが、「この壁を乗り越えられた時にはどれだけうれしいのかって。逆にわくわくしている」。一つ優勝を逃しただけで沈みがちだった昨季までの表情は、今は見せない。

高梨の強みは空中で素早く浮力をつかめることにある

急伸する競争相手の力を認めているからこそだろう。男子のように鋭く強い踏み切りで、多少空中で板が暴れようが距離を伸ばしてくるマーレン・ルンビ(ノルウェー)を、高梨は「別格」とたたえる。日本勢の独壇場を許すまじ、と北欧のジャンプ強国が育てた23歳のジャンパーは「昨季は良かったり悪かったり。でも今季はずっと安定して飛べている」と自身の成長をかみしめている。

得点をみればルンビの力は一目瞭然だ。昨季の1試合平均230.1点に対し、今季は10戦で262.0点。距離換算で実に約15メートルも伸ばしている。高梨はこの壁を越えなければ、追い求めてきた金メダルはない。

ルンビを気にする前に、済ませておくべきことがある。低空に沈んだ自分のフライトを再び引き上げることだ。

高梨の強みは空中で素早く浮力をつかむうまさにある。身長152センチの小さな体でもジャンプ台で反力をうまく使って飛び出す動作がその源にはある。だが肝心要の踏み切りで昨季から微妙な狂いが生じている。春先から始動を早め、一から見直してきた今季も「インパクトを伝え切れていない」。

離陸でしくじると空中も苦しい。1月の札幌、蔵王大会は「上半身が跳ね上がり過ぎ」「板が開き過ぎ」。こうなると着地もたたられる。浮力を得られぬまま伸びを欠き、ストンと落ちる。

国内4連戦で、飛び出しにつながる助走の改善点が見つかったのを「収穫」と語った。ただ、飛び出しのインパクトは実戦で養うというのが高梨の持論。精度の高いジャンプを繰り返すことで「厚みが出る」と言う。その実戦が足りない。2月初旬のオーストリアでの2戦が雪不足で中止になり、本番まで実戦で飛べる機会はもうない。

状況は厳しいが、「(残された期間で)飛べるだけ飛びたい」と言い残して25日未明に旅立った。チューニングさえうまくいけば、戦える裏付けはある。2年前、蔵王の地で記録した106メートル。当時のヒルサイズに届いたこのジャンプを2本再現できれば、19日、21日のW杯蔵王大会でともに圧勝したルンビの得点をも大きく超える。ライバルは難攻不落に見えるが、本当の敵は内にある。

4年前のソチ五輪に至るまではW杯13戦10勝と順風満帆だった。にもかかわらず本番は4位。高梨ほど「リベンジ」の言葉を反すうしてきた選手はいない。「焦らず、慌てず、諦めず。この最後の『諦めず』が一番大事」。もがきながら、それでも前を向いて平昌のスタート台に立つ。

(西堀卓司)

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