2018年5月22日(火)

小型ロケット参入、再点火

スタートアップ
科学&新技術
2018/1/30 6:30
保存
共有
印刷
その他

 小型ロケット打ち上げ事業への参入を目指す日本企業が、相次いで再挑戦に臨もうとしている。キヤノン電子とインターステラテクノロジズ(北海道大樹町、稲川貴大社長)がそれぞれ、初打ち上げ失敗の経験を糧に2度目の打ち上げに挑む。民間のロケットビジネスを解禁する宇宙活動法が11月に本格施行する前に成功すれば、事業化に向けて大きく展望が開ける。

 キヤノン電子は2月3日にも宇宙航空研究開発機構(JAXA)が手掛ける電柱大のミニロケット「SS―520」に制御装置などを搭載し、内之浦宇宙空間観測所(鹿児島県)から打ち上げて性能の実証を目指す。

初打ち上げに失敗したミニロケット「SS―520」(JAXA提供)

初打ち上げに失敗したミニロケット「SS―520」(JAXA提供)

 2017年1月の初打ち上げはほろ苦い結果で終わった。無事に打ち上がったものの、まもなくロケットからの情報が途絶えた。予定外の方向に飛んでいく危険を考え、ロケットの点火を中断。機体を海に落下せざるを得なかった。性能を確かめるはずだった衛星や制御機器は海中に消えた。

 JAXAは、配線のショートが原因である可能性が高いとし、今回は5つの対策を施した。

 配線の束を通した金属製の穴の縁に保護材を取り付け、配線を傷つけないようにした。配線がロケットの外側を伝う部分では、保護筒の形を変えるなどした。空中を進む際にかかる加重や加熱により耐えられるようになる。ショートの2次被害を防ぐため回線を見直した。

 キヤノン電子はIHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行と設立した新会社で、ロケット打ち上げサービスの事業化を目指している。ロケットを自前で製造し、専用の発射場での打ち上げサービスまで一貫して手掛けたい考えだ。

 ロケットは重さ100キロ前後の超小型~小型の衛星を単独で運べる固体燃料式を想定している。並行して発射場の準備も進めており、本州最南端の和歌山県串本町に発射場を建設する方針だ。このほど本格的に地質調査や地権者への説明に着手すると決め、県や町に伝えた。

 今回の打ち上げが成功すれば、実証できた制御装置を組み込んだロケットの設計図づくりに役立つ。自社ロケットの打ち上げ実証のほか、宇宙活動法でロケットの型式や発射場の認定を受ける手続きも待っており、制御装置だけでもいち早く実証できれば弾みがつきそうだ。

17年7月に打ち上げたインターステラテクノロジズのロケット「MOMO」1号機(同社提供)

17年7月に打ち上げたインターステラテクノロジズのロケット「MOMO」1号機(同社提供)

 インターステラテクノロジズは今春にも観測ロケット「MOMO」2号機を打ち上げる。同社も17年の初打ち上げは通信が途絶えて失敗している。機体の部品が圧力で破損したとみられる。

 再起を期す同社は1月下旬、東京都内で実物大の模型を公開した。創業者の堀江貴文氏は「2号機が成功すれば3、4号機とどんどん打ち上がるだろう」と期待した。

 披露した模型はSS―520とほぼ同じ大きさだが、液体燃料という点で異なる。発射場は大樹町の支援を受けた敷地を使っている。地元の期待が大きいだけに、今度こそという気持ちは強い。

 一刻でも早い打ち上げ成功を追い求めるのにはわけがある。1つはロケットの打ち上げを企業に開放する宇宙活動法の成立だ。11月に本格施行すれば、企業から申請を受け付け、国が認めるかどうかの審査に入る。申請や認定という形でも「打ち上げ成功」の実績は大きく影響する。

 海外との競争激化も背景にある。1月下旬、ついに米ロケットラボ社が小型ロケット「エレクトロン」の打ち上げに成功した。ニュージーランドの発射場から放ち、予定通りの軌道に小型衛星3基を投入した。2回目の打ち上げで成功を収め、受注や増産が加速するとの期待が膨らむ。

 小型ロケットへの相次ぐ参入は小型衛星の需要拡大を見込んだ動きだ。大量の小型衛星で地球を網のように取り囲み、どこからでも通信や観測ができる「コンステレーション」ビジネスが加速しつつあるからだ。

 小型衛星は1基あたりの機能は限られ、数で機能を補う必要がある。米調査会社によると、需要は23年に460基と16年の4.6倍に増える。

 小型衛星の数が多いと、それだけロケットも必要になる。大型のロケットに複数の衛星を相乗りして運ぶよりも、小型ロケットで好きな時期に少しずつ打ち上げる方が利点が大きいと参入企業は考えている。

 今後、市場が大きくなれば、海外からの参入も相次ぐ。国内企業はまず国内で小型ロケット打ち上げ成功を競うが、その先には海外勢と市場を取り合う真の競争が待ち受ける。

(科学技術部 猪俣里美)

[日経産業新聞 2018年1月30日付]

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報