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上場忌避が起こっていないか(大機小機)

日銀の資金循環統計によれば家計が保有する非上場株式は急激に増加し、昨年9月末には84兆円に達している。当時の東京証券取引所第1部上場株の時価総額が626兆円であるからその13%に達する規模だ。

非上場株の時価が増加する原因は2つある。1つは景気の回復が非上場の中小企業にまで及んできたという明るい理由である。もう1つは、非上場企業の間に上場忌避の動きが出ているのではないかという心配な理由だ。

上場基準を満たしている企業が上場しない理由は多様である。金融緩和で銀行からの資金調達が容易になっているため、あえて上場する必要がないという理由もあるかもしれない。気になるのは、上場に伴うコストが高いと考える経営者が増えているのではないかという理由である。

そうなるのは、目に見えない上場コストが増えているからだ。上場コストには2種類のものがある。1つは、公認会計士による監査のコストや社外取締役や社外監査役の報酬支払いなどの目に見える直接的なコストである。

第2は、上場企業が満たすべきルールが厳しくなり、よい経営ができなくなるという目に見えないコストである。投資家保護を考えて導入された規制が企業経営の大きな制約になっているという認識が上場企業だけでなく、日本の非上場企業の経営者の間にも広がっている。

短期投資家の発言力が強い米国では、米国内の証券市場に上場すると経営の制約条件が厳しすぎて良い経営ができなくなる可能性が大きくなるので、欧州の市場への上場を薦めるベンチャーキャピタルが増えているといわれている。

このままだと、日本でも上場を忌避する企業や投資家がもっと増えるかもしれない。それは、上場を忌避する企業にとって、リスク資金を得る道が制約されるという意味でマイナスであるだけでなく、マクロ経済の成長にもマイナスの影響を及ぼす可能性がある。

また、有望な投資先が増えないという意味では、投資家にもマイナスである。投資家保護も大切だが、それが上場企業の負担になりすぎないようにする工夫も必要だ。市場管理当局は、角を矯めて牛を殺すという結果にならないように気をつける必要がある。(猪突)

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