2019年6月20日(木)

乳酸菌の可能性 培養中 日東薬品工業(もっと関西)
ここに技あり

2018/1/29 17:00
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京都府向日市に金属製巨大タンクを使ってヒトの腸内を再現するという世界でここしかない研究施設がある。医薬中堅の日東薬品工業(京都府向日市)はタンクを腸に見立て、人肌の温度で乳酸菌を培養し、油と反応させて血糖値を下げたり腸管の炎症を抑えたりする物質を取り出し、医薬品にする事業に取り組んでいる。体内に500兆前後いるとされる乳酸菌の神秘に挑んでいる。

培養した乳酸菌を用いて脂肪酸「HYA」を作り出す巨大タンク

培養した乳酸菌を用いて脂肪酸「HYA」を作り出す巨大タンク

日東薬品が開発するのは乳酸菌が生み出す「HYA」と呼ばれる脂肪酸だ。研究所では高さ4メートルほどのステンレスタンクが並ぶ。上部から容器に入れた乳酸菌を入れ、サラダ油などのリノール酸と混ぜると、乳酸菌の代謝によって機能性脂肪酸が生まれる。取り出して精製し、カプセル製剤にして食品や医薬品にする。

乳酸菌はヒトの腸に諸説あるものの100兆~1000兆存在しているとされ、細胞の数(約60兆個)より多い。だがその実態は「7割がよくわかっていない」(研究開発本部長の北尾浩平常務)。まさに人体の小宇宙と言える。

日東薬品は乳酸菌の専門メーカーとして50種類の乳酸菌を培養しており、併設する2トンのタンクでは乳酸菌を35度程度で増やし、凍結乾燥して食品向けに出荷している。近年の乳酸菌ブームで増産が続いており、ロッテのチョコレート菓子「乳酸菌ショコラ」にも乳酸菌を供給した。

乳酸菌は謎の多い生き物だ。研究開発本部の清水秀憲係長は理化学研究所にも出向していた乳酸菌培養のスペシャリスト。シャーレを片手に培養が難しい新たな乳酸菌を増やす研究を続ける。秘訣は「似たような菌の培養を参考にしながらエサとなる培地や条件を探っていく」ことだという。新たな乳酸菌の働きを調べたり、研究のために増やしたりする目的で培養の依頼が殺到している。

乳酸菌の驚くべき働きとして見つかった代謝物のHYAは京都大学の研究で、乳酸菌がヒトの体の内部で摂取した油と反応して、別の脂肪酸をつくっていることを明らかにしたことがきっかけだ。HYAはヒトの体の内部で血糖値を抑えたり、潰瘍性大腸炎を防いだりする働きがある。

日東薬品はこの成分に注目し、タンクを使って乳酸菌から効率的に代謝物を取り出して、健康食品や医薬品として製品化する。日本で機能性表示食品として2019年の承認、20年の販売を目指している。

北尾常務は「誰もつくったことがない新薬をつくるのが悲願だ」と意気込む。食べても太らないスイーツや、乳酸菌由来の難病治療薬が近い将来誕生するかもしれない。

文 京都支社 渡辺直樹

写真 為広剛

カメラマンひとこと ピカピカに光る巨大な培養タンク。大きさが際立つようにローアングルで撮影しようと、近づいてしゃがみ込む。鏡のような表面にふと目をやると、カメラを構えた自分が映っている。アングルを変えずに自分の姿が消えるよう、タンクとにらみ合いながら体だけ少しずつ後ずさり。伸びきった腕をぷるぷると震わせながらシャッターを切った。

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