2018年2月21日(水)

欧州、強まるポピュリズム 独仏は下院選の得票20%超
イタリアでは第1党うかがう

ドイツ政局
ヨーロッパ
2018/1/27 22:55
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 2018年の欧州は、既存政党に対抗し、大衆迎合主義(ポピュリズム)を掲げる政党の勢いがさらに強まる見通しだ。政権選択に結びつく下院選挙で極右、極左などの得票率は右肩上がりに伸び、ドイツやフランスは20%を超えた。3月のイタリア下院選でもポピュリズムの「五つ星運動」が第1党をうかがう。貧困や難民問題で後手に回った既存政党への不信感が底流にあり、欧州政治は不安定さを増す。

 「我々は5年前よりずっと強くなった。私にはすでに勝ったとわかる」。イタリア北西部のイブレア市で13日、五つ星運動の党首、ディ・マイオ氏(31)は声を張り上げた。建設作業員やウエーターなどを経て下院議員に当選した同氏は、経営難の銀行を救済し、中小企業を支える「公共銀行」の設立を約束。貧困層には最低でも月780ユーロ(約10万円)を支給し、400もの「無駄な法律」を廃止するという。

 中道左派の与党や元首相のベルルスコーニ氏が率いる中道右派は大型減税などで対抗。選挙戦は「ばらまき合戦」の様相を帯び、欧州最悪の財政をどう立て直すかといった政策論は深まらない。

 イスラム排斥を掲げる極右「ドイツのための選択肢(AfD)」、反欧州連合(EU)の極左「不服従のフランス」――。欧州で支持を伸ばす反既存政党は極右から極左まで幅広い。難民の排斥や財政を無視した社会保障などの過激な政策を掲げ、既存政党との分かりやすい対立構図を作る政治手法は共通している。

 反既存政党への支持は2000年代以降、欧州の主要国でほぼ一貫して伸びてきた。下院選挙での得票率は10年ほど前にはフランスやドイツは10%前後だったが、17年にはフランスが26%、ドイツが22%に高まった。

 マリーヌ・ルペン党首の仏国民戦線やウィルダース党首のオランダ自由党のような比較的歴史のある政党だけでなく、新しい勢力が台頭していることも特徴だ。ナチズムへの反省が強かったドイツでも、17年9月の下院選挙で極右のAfDが第3党に躍進した。

 オーストリアでは極右の自由党が17年12月に連立政権に入り、チェコではポピュリズム政党とされる「ANO」のバビシュ党首が首相に任命された。実際に国内政治を動かす例が出てきた。

 背景には、若者の高い失業率や所得格差の広がりで、既存政党への不満が高まっていることがある。ユーロ圏の失業率は8%台だが、24歳以下の若者は18%強と約2倍。フランスは20%超、イタリアは30%超で、若者が安定した職を手に入れるハードルは高いままだ。さらに、所得が平均の6割以下という「相対的貧困」も増えている。EU全体で8600万人に達し、債務危機の始まった10年に比べて500万人以上も増えた。

 欧州の景気は4年半にわたって力強く回復しているが、賃上げの動きは依然として鈍い。景気回復の恩恵が一部の資産家や高所得者に偏り、若者や中低所得者に行き渡っていない可能性が高い。

 かつて、そんな不満の受け皿になったのは中道左派の社会民主主義勢力だった。ところが欧州の左派勢力は、ドイツ社会民主党(SPD)や、少し前までの英労働党のように、政権参加を通して右寄りに政策を転換。不満を抱える有権者の受け皿になりにくくなった。行き場を失った不満票の一部がポピュリズム政党に流れている構図だ。

 さらに15年以降の難民問題も影を落とす。シリアなどから欧州に流入した難民らの数は同年だけで100万人を上回った。その後、欧州はトルコなどの協力で流れを抑え込んだが、すでに流入した難民らは財政を圧迫し続け、治安への不安にもつながっている。

 17年10月のオーストリア議会選では、難民らへの社会保障給付が焦点になった。国内の貧困などの問題がなおざりにされたまま、難民ばかり手厚く扱っているのではないかとの疑念を持たれやすくなっている。

 反既存政党が議会に一定の勢力を持つと、過半数が必要な連立政権作りは難しさを増し、政治は不安定になる。極右が第2党になったオランダは17年、連立政権作りに7カ月もかかった。極右と旧東独の共産党系で議席の2割超を占めるドイツでも、連立協議は迷走を繰り返している。

 ポピュリズムのうねりをどう止めるのか。ヒントになりそうなのが、フランスのマクロン大統領だ。既存政党への不安を取り込んでいる点は同じだが、政策は労働市場改革など経済成長を軸にした王道をいく。有権者の不安が政治の力に変わるのだとすれば、説得力のある言葉で新たな政策を提示していく地力が求められている。

(ベルリン=石川潤、ジュネーブ=細川倫太郎)

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