2018年11月14日(水)

トランプ氏、変心か乱心か TPP復帰検討を突如表明

2018/1/27 1:44
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【ダボス(スイス東部)=河浪武史】トランプ米大統領が環太平洋経済連携協定(TPP)の復帰検討を突如表明した。米国が再び加われば、21世紀型の自由貿易体制づくりに勢いがつく。対中国を念頭に置いた米国のアジア戦略の転換にもつながる。ただ、反TPPを旗印に選挙を勝ち抜いたトランプ氏の真意は不明。「米国第一主義」を前面に協定見直しを強く求める可能性もある。

「大きな話があるぞ」。トランプ氏は25日、米テレビのインタビューでそう切り出してTPPの復帰検討を表明した。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では国際協調に背を向ける米政権への懸念が噴出。そこにTPP再検討を手土産として持ち込んだ。

旗振り役だった米国がTPPに再び加われば、その意義は大きい。経済圏の規模は世界の国内総生産(GDP)の13%から40%近くに増え、圧倒的に世界最大の自由貿易協定(FTA)となる。

TPPは関税引き下げだけでなく、知的財産権や電子商取引など複雑な国際規定も盛り込む。資金力をテコに独自経済圏を広げる中国をけん制しつつ、日米主導で21世紀型の貿易ルールづくりを主導できる。トランプ氏は中国の知財侵害を問題視しており、政権のスタンスがTPPの理念に寄ってきたともいえる。

米産業界も焦りを抱いていた。日本など11カ国は1年かけてTPPで再合意。「米国抜き」の自由貿易圏が生まれかけた。対日貿易では米産牛肉の関税は38.5%。それがオーストラリア産は長期的に9%まで下がる。

米製品はアジア市場で足場を失いかねず、共和党の支持母体である商工団体や農畜産団体は、ホワイトハウスにTPP復帰を何度も打診。今秋に中間選挙を控えるトランプ氏も、産業界に配慮して方針転換を迫られた。

ただ、先にダボス入りしたムニューシン財務長官らは24日「我々は2国間協定の信奉者だ」などと記者団に語り、TPP復帰に否定的な考えを繰り返していた。政権内でTPP復帰を綿密に検討した痕跡はなく、交渉相手国も「全く寝耳に水」(日本側通商関係者)と真意を測りかねる。

「協定はひどい内容だ。以前の合意よりも、かなり良いものになればTPPをやる」。トランプ氏は協定復帰の条件として、合意内容を見直す再交渉を示唆した。政権の最大の課題は年7000億ドル(80兆円弱)もの貿易赤字の圧縮だ。支持率が低迷するトランプ政権は中間選挙で苦戦が避けられない。TPP再交渉で各国に赤字削減を迫り、政権の実績づくりとする可能性もある。

トランプ氏は反TPPを旗印に大統領選に勝利した。岩盤支持層とされる中西部の労働者は「アジアやメキシコに仕事を奪われた」とFTAに反感を持つ。米政府高官は「TPPはひどい協定だ。その考えをトランプ氏が変えたわけではない」と、中間選挙を前に労働者への配慮も忘れない。

経済ナショナリストとされたバノン元首席戦略官の失脚など地殻変動はあるが、トランプ政権が「米国第一主義」から転換したわけではない。

■日本、再交渉に否定的

日本政府は米国を除く11カ国で合意した「TPP11」を予定通り3月に署名し、発効させることをめざしつつ、トランプ氏の発言の真意を見極める構えだ。

「TPPの意義を説明し、トランプ氏の真意を確認したい」。西村康稔官房副長官は26日の記者会見でこう語った。日本の交渉担当者は「TPPについて2度聞かれ、ほぼ同じ回答を繰り返した」とし、トランプ氏の発言をその場の思いつきではないと受け止めた。

日本政府はトランプ氏の復帰検討を歓迎するが、内容の再交渉には否定的だ。2015年に大筋合意したオリジナル版TPPは12カ国の複雑な利害関係を調整した「ガラス細工」とされる。一部を修正すると各国の要求が噴出し、収拾がつかなくなるためだ。

TPP参加国にはトランプ政権主導の再交渉に警戒感がある。米自動車産業界は日本の通貨安に歯止めをかける「為替条項」を盛り込むよう求めている。オバマ前政権下で最後まで紛糾した医薬品のデータ保護期間など参加国間の摩擦が再び強まる可能性もある。

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