2018年12月11日(火)

AI、麻雀でも5年以内にトッププロより強く
東大・鶴岡准教授に聞く

AI
2018/1/29 6:30
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ルールが定まったゲーム分野で人工知能(AI)の成果が相次いでいる。2017年にはプロの対局データを学ばなくても、自己対局だけでプロ棋士を超える能力を獲得できる囲碁AIが誕生し、ノウハウはチェスや将棋にも応用された。ゲーム分野でのAIの今後の展開や他への応用について、コンピューター将棋「激指(げきさし)」を開発した東京大学の鶴岡慶雅准教授に聞いた。

東大の鶴岡准教授

東大の鶴岡准教授

 つるおか・よしまさ 02年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。英マンチェスター大学、北陸先端科学技術大学院大学准教授などを経て11年から現職。世界コンピュータ将棋選手権に4度優勝した「激指」を学生時代に開発した。

――囲碁AI「アルファ碁」などの進化をどう捉えていますか。

「人間のトップに勝てるのは10年以上先だと思われていたが、短期間で信じられないほど強くなった。囲碁でディープラーニング(深層学習)が使えるという認識は持っていたが、ここまで劇的にうまくいくとは思っていなかった。今は人間のトップよりもはるかに上のレベルだ。将棋やチェスでもほとんど同じ仕組みで、強くなっている」

――何が囲碁AIの能力を高めるブレークスルーになったのでしょうか。

「(人の脳を模した)ニューラルネットワークを何層にも重ねると、ある局面をみたときに、白が有利か黒が有利かを点数化するのが驚くほど正確になった。ある局面で次にどこに打つべきかを予測するのも正確だ。アイデアは昔からあったが、ここまで正確なものができるとは誰も思っていなかったのではないか」

――AIは囲碁やチェスなど相手の状況も分かる「完全情報ゲーム」で人間を上回り、次の関心はポーカーやマージャン(麻雀)のように相手の手の内が分からない「不完全情報ゲーム」に移っています。

「ポーカーは不完全情報ゲームの中では簡単な方で、1対1ではAIがプロに勝っている。お互いが自分だけ行動を変えても得にならない状況であるナッシュ均衡を調べる精度を、AIによって高めれば勝てるようになる。ただ、3人以上の多人数では必ずしもこの方法が使えない。相手が1人であれば、相手を強いプレーヤーと仮定して戦略を立てていけばいいが、多人数の場合は強いプレーヤー同士で戦うのと、弱いプレーヤーが含まれていて、その人を狙うのとでは戦略が変わってくるからだ」

マージャンで学生の営業スキルを見極めようとした企業もある(2016年4月、スターティアの就活イベント)

マージャンで学生の営業スキルを見極めようとした企業もある(2016年4月、スターティアの就活イベント)

「マージャンは、強いプレーヤーの対戦データを使い、機械学習で強いプレーヤーをまねるのが第一歩だろう。それだけでは相手の手を考慮できないので、鳴いて早上がりしたり、安い手でも2番手確定させたりするなどの要素をどんどん組み込んでいく。正確な確率計算などを組み合わせることで、人間より強くする戦略が考えられる」

――多人数のポーカーやマージャンでもAIが人間より強くなりますか。

「どちらも現在、トップレベルには勝てないが、普通の人よりははるかに強いといわれている。遅くとも5年以内でAIがトッププロより強くなるだろう」

「ただ、スタークラフトというリアルタイムシミュレーションゲームのような複雑なものでは、アマチュア以下だ。人間の強いプレーヤーは複雑でも無意識のうちにぼんやり予測して戦略をたてているが、AIにはうまくできない」

――他の分野ではどう役立ちますか。

「現実の問題をいきなり解くのは難しく、手が届きそうな研究開発の題材にゲームは向いている。ゲームでよく使われる強化学習は電力削減にも使われ、最近では自然言語処理の分野でも重要になっている。それぞれのサブフィールドは近づいており、相互作用を意識しなければならない」

記者の目 AIの活用法考える機会に

ゲームはルールがきちんと定まっており、人工知能(AI)が生かしやすい分野だ。囲碁でプロ棋士を圧倒し、学習データがなくても最強レベルの能力を獲得したことは大きな進歩だ。一方で、専門家の間では「ルールのあるゲームでAIを使えても、答えの定まっていない現実社会には生かせない」という懐疑的な見方も多い。

日立製作所は2017年12月、ビールの生産・販売を模したゲームをAIで自己学習した成果をもとに、流通システムを構築し、ゲーム用AIの利用方法を示した。ポーカーやマージャンのような不完全情報ゲームでAIが成果を挙げれば、例えば現実の株式市場を「不特定多数が集まる株価の予測ゲーム」のように捉えて、応用できる可能性もある。

ゲーム用AIを「現実社会には生かせない」と切り捨てるのではなく、成果を活用する方法を考える機会にすべきだ。

(科学技術部 大越優樹)

[日経産業新聞2018年1月29日付]

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