2018年9月25日(火)

出版、最後の砦マンガ沈む 海賊版横行で販売2ケタ減

2018/1/25 22:29
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 出版科学研究所は25日、2017年の出版市場が前年比7%減の1兆3701億円だったと発表した。前年割れは13年連続で市場はピークの半分に縮んだが、関係者を驚かせたのはその内訳だ。最後の砦(とりで)の漫画単行本(コミックス)販売が13%減と初めて2ケタの減少に沈んだのだ。苦境の背後には急速にはびこり始めた海賊版サイトの拡大がある。

海賊版サイトによる被害が急増している(無断で漫画などを公開していたサイト)

海賊版サイトによる被害が急増している(無断で漫画などを公開していたサイト)

 25日に公表された漫画本販売の市場データをみながら、大手出版社の販売責任者がつぶやいた。「コミックスの落ち込みはもっとひどいのでは」。実際、取次大手のトーハンによると17年4~9月の漫画の売上高は前年同期比18%減。日本出版販売では例年売り上げが膨らむ年末年始に2割近い減少だった。同社の安西浩和専務は「ショッキングな数字だ」と話す。

 1996年をピークに縮小傾向が続く出版市場。そのなかで人気漫画の単行本は堅調な数少ないジャンルだった。集英社の「週刊少年ジャンプ」など急激な落ち込みが続く漫画雑誌を05年に逆転し、前年を上回る年も何度かあった。下げが目立ち始めたのが3年前。16年に2千億円を割り込み、17年には約1700億円まで縮小した。

 出版社が漫画の電子化を進める影響もあるが、関係者の多くが失速の原因に挙げるのが海賊版サイトの横行だ。ある出版社では17年秋に漫画本の売れ行きが突然鈍り、調べると複数社の人気漫画を集めた海賊版サイトに読者が流れていた。被害額は月4億~5億円に上ったという。

 こうしたサイトがスマートフォンの普及とともに急増。「ワンピース」など人気漫画の掲載情報はネット上の口コミで瞬く間に広がる。サイトはもちろん非合法だが、海外のサーバーを経由するなど運営者の特定すら困難な場合が多い。17年5月に閉鎖された「フリーブックス」もサーバー特定に3カ月かかった。

 最大規模といわれるサイトを開いてみると、「七つの大罪」「ドラゴンボール」といった人気タイトルの表紙画像が5千以上並んでいた。時々表示される広告が収益源とみられるが、実態は不明だ。著作権法に詳しい福井健策弁護士は「海賊版サイトを見れば運営者は広告収入を得る。犯罪に加担しているという認識がない消費者も多いのでは」と話す。

 相手が大手サイトを使うなら、違法な配信を防ぐ手立てはある。動画サイト「ユーチューブ」は著作権者が動画や音楽のデータを登録すると、他の投稿者が投稿した同じ内容のコンテンツを検出する仕組みを活用。著作権者はそれを閲覧できないようにしたり、広告を表示して自分の収益にしたりできる。LINEは人工知能で写真などの不正利用を検知するシステムを開発し、まとめサイトに試験導入した。ただ、海賊版サイトは運営者の連絡先すらわからないケースも多い。

 出版社にとって漫画本は文字通りドル箱。漫画雑誌の掲載作品がもとになるためコストはあまりかからず、人気作品なら発売と同時に大量の販売を見込める。ある大手出版社の場合、漫画本だけで数十億円の利益を稼ぎ、赤字の雑誌などを合わせると利益は8割以上減るという。ドル箱の失速は死活問題だ。

 深刻なのは書店も同じ。トーハンによると漫画本は全国の書店の売上高の19%を占める。書店の営業利益率は0.3%弱しかなく、漫画本が売れなくなればかなりの痛手になる。出版不況といわれて久しいが、業界が正念場を迎えているのは間違いない。(亀井慶一)

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