2018年12月15日(土)

川重、米地下鉄1600両受注を発表 NYで首位守る

2018/1/25 12:17
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川崎重工業は25日、米ニューヨークの地下鉄車両の大量受注が決まったと正式に発表した。最大1612両、約37億ドル(約4040億円)と同社最大の受注となる。鉄道車両メーカーは再編で巨大企業になった海外勢が有力だが、規模で劣る川重は納期管理や品質などの強みを生かせる北米市場などに焦点を当ててきた。独自の存在感を示し、世界最大手の中国中車(CRRC)をも巻き込む受注競争を制した。

納期管理や品質面が評価され、受注競争を制した(川重が製造したR160)

納期管理や品質面が評価され、受注競争を制した(川重が製造したR160)

ニューヨーク市交通局(NYCT)が川重の米現地法人、カワサキ・レール・カー(ニューヨーク州)に新型車両「R211」の発注を内示した。当初発注は535両、約14億ドル(約1500億円)で、2020~23年に納入する。追加のオプション契約を含めると1612両、4000億円規模に膨らみ、川重の鉄道車両部門の年間売上高(約1400億円)の約3倍の大型受注となる。

■中国・カナダ勢との競争制す

同社の受注は「サンショウは小粒でもぴりりと辛い」を地で行く結果となった。当初、川重と競合して入札で優勢とされたのが売上高4兆円に迫る世界最大手、中国中車と4位のカナダ・ボンバルディアの共同入札だった。特に中車は米ボストンの地下鉄車両を受注するなどコスト競争力を武器に北米など海外で攻勢を強めてきた。ただ、NYCTや、NYCTを傘下に収めるニューヨーク州都市交通局(MTA)は技術力や納期管理力を重視し、17年に発注候補を川重に一本化した。

背景には、高品質な新型車両を迅速に取り入れたいNYCTの意向が強く働いた。ニューヨークでは車両の老朽化などに起因する遅れや混雑が頻発している。「画期的な新型車両の開発は地下鉄システムの近代化に欠かせない」(MTAのジョセフ・ルホタ会長)と、乗降時間を短縮できる広い扉などを備えるR211の導入を急いでいる。

そんななか、MTAはボンバルディアに発注したR179の納入が2年以上遅延したことを問題視。一方「(川重が手掛けた現行車両の)R160とR188はNYCTの車両で最も信頼性が高い」として、MTAの検討委員会が川重への発注に満場一致で賛同した。

■日本流のサービスに支持

川重が他の追随を許さない存在感で契約を取る勝利の方程式は一朝一夕で築いたものではなかった。1994年のニューヨーク239丁目。深夜の車両基地で車体のログを熱心にチェックするジーンズ姿の日本人4人組があった。そのうちの1人で、現場を率いたのが現社長の金花芳則氏だ。

当時は次世代車両の受注を控えた正念場。試験車両の運行終了後にトラブルをひとつひとつ分析し、故障の少ない車両に仕上げ、「R142A」400両を受注。今や川重はNYCTの地下鉄車両でシェア首位(約30%)で、同社にとっても海外事業の屋台骨となった。

「週末の故障にも迅速に対応する川重の日本流のサービスが支持されてきた」(金花社長)。北米は日本と同様に車両メーカーよりも運行事業者の発言力が強いとされ、路線や運行事業者ごとに仕様を細かく変える必要がある。事業規模よりも品質やサービス力がものを言うため、日本流のものづくり力が生かしやすい。欧州では18年に統合予定の世界2位の独シーメンスと3位のアルストムの牙城で、事業規模がそのまま受注力につながりやすいのと対照的だ。

■NY向け受注総計に迫る規模

それでも、合計1600両を超える受注は、川重が85年以来NYCT向けに納入してきた車両の総計(2200両超)に迫る規模で、納期通りの製造・納入は簡単ではない。川重が米国で展開するリンカーン工場(ネブラスカ州)やヨンカース工場(ニューヨーク州)が連携し、要求通りの製造・サービス体制をとることが不可欠だ。

事業の収益面を期待するには、大量受注を新たなビジネスにつなげるアイデアも有望といえる。鉄道車両で国内最大手、日立製作所が英国で受注し、17年に運行を始めた高速鉄道の車両受注は計866両にとどまる。ただ、契約には27年半に及ぶメンテナンス事業も含まれるため、事業総額は1兆円規模に膨らんだ。

川重の受注規模は1600両超と莫大だが、契約は主に老朽化した車両の置き換え需要。今後の事業拡大にはNYCTでの高いシェアや、車両のデータ、これまでの細やかなサービスの実績を生かした運用支援などを事業化することで、安定的な収益を期待する戦略も選択肢となりそうだ。

(牛山知也)

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