2019年9月20日(金)

おカネの理解 対面で
WAVE(瀧俊雄氏)

2018/1/25 6:30
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昨年話題を呼んだ、自動で身体の採寸をしてくれるZOZOSUIT(ゾゾスーツ)。「服を買いに行く服がない」問題を解決してくれるかもしれないこの発明に、筆者を含めて購入を表明した人の一部は、その到着を実は恐れている。採寸されたところで、別におしゃれにならないことがバレるのは時間の問題だ。

マネーフォワード取締役兼Fintech研究所長。野村証券で家計行動、年金制度などを研究。スタンフォード大学経営大学院、野村ホールディングスの企画部門を経て、2012年にマネーフォワードの設立に参画。

バイト代を握りしめてヘルムートラングに通った学生時代も今は昔。筆者は同じユニクロのパンツを何着もそろえ、ザッカーバーグよろしく「服を選ぶエネルギーが(知的活動に)もったいない」とうそぶく落後者。一方、社内には奥さんに全身をコーディネートされている同僚がいる。内心バカにしながらも、H君のカジュアルウエアはなかなかサマになっている。正直、私も対面でのアドバイスが欲しい。

こんな恥をさらすのも、フィンテックの今後のカギは対面チャネルと考えているからだ。当社は1月5日、新宿で「mirai talk(ミライトーク)」というお金のアドバイスを提供する会社を設立した。同社は家計の改善そのものを商品としている。家計簿アプリだけでは節約や資産運用に二の足を踏んでしまう層に対して、支出を浪費や投資などに区分しながら、人それぞれの行動変容を促すのがその狙いだ。

金融におけるインターネットサービス発の店舗戦略は、成功例の少ない挑戦である。この分野の先駆例としてはカフェ併設の銀行店舗として、米キャピタル・ワン・カフェが有名だ。

筆者はその前身を含めて2004年と17年の2回、取材したことがある。だが、その存在価値には専用デビットカードで買うとコーヒーが安いといった、口座開設への誘導以上の意味があるようには感じられなかった。とはいえこのようなカフェをキャピタル・ワンは全米で18店舗も展開しており、米国の銀行の収益性の高さをかえって実感する場所となっている。

一方で、よりわかりやすく店舗戦略で成功している有名事例として、米運用会社フィデリティがある。同社は「対面営業」は行わない業態だが、例えばニューヨークを歩くとそこかしこに店舗がある。店頭にはインターネット端末が、奥には資産形成アドバイスを受けられるブースがある。

驚くべくは開催するセミナーの主たるコンテンツのひとつが「フィデリティのサイトへのログイン方法と取引の仕方」であること。それくらい店舗行かずともできるんじゃないか、米国企業はUXに投資してるんじゃないの、とも思うのだが、操作方法の「一歩目」をお店で体験することや、そもそも何がわからないのかがわからない、という人にとっては重要なチャネルとなっている。

お金は難しい。取引ひとつでも、なかなか踏み出せない一歩目がある。人それぞれの事情が多く、家庭内での節約提案はけんかの温床である。だからこそ、金融サービス側から家計への客観的な指摘をもらい、手取り足取り動きを覚え、先生を前にしての新しい行動と約束が必要となるのだ。

スマホが直観的なお金の理解をもたらしても、私たちは耳障りなアドバイスを継続して守り続けられるほど強くはない。それを乗り越えることこそが、リアルな店舗の意味である。

[日経産業新聞 2018年1月25日付]

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