2018年4月19日(木)

無洗剤 ランドリー進化系 wash-plus 高梨社長

スタートアップ
サービス・食品
2018/1/24 10:00
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 古くさい、汚い、使いにくい――。こんなイメージを打ち破り、進化系コインランドリーの開発にいそしむ男がいる。wash―plus(ウォッシュプラス、千葉県浦安市)の高梨健太郎社長(44)。洗剤を使わず水のみで洗い上げるコインランドリーを展開。子どものアレルギーを気にする母親に支持されている。

wash―plusの高梨社長

 高梨社長の略歴 1991年市川商工会議所に入社。記帳専任職員として働く 2004年家業の不動産会社に入社 07年 不動産会社の社長就任 13年wash-plus創業、洗剤を使わないコインランドリー店を開業 17年スマホ決済などができる「スマートランドリー」開発。起業家イベント「超域クラウド交流会」で千葉県知事賞を受賞

 「(テスラ創業者の)イーロン・マスク氏と年齢はほぼ一緒ですが、私はまだスタート地点に立ったところですから」。愛車の米テスラ「モデルX」のハンドルを握りながら笑う高梨氏は、生まれ育った浦安市で不動産会社を経営する一方、2013年から新型コインランドリーの開発・運営に着手した。

 野球のスポーツ推薦で商業高校に入学したが、大学は野球進学できずに断念。展示会の施工会社を経て19歳の時に市川商工会議所に入り、中小企業向けに帳簿の付け方を教えた。31歳の時に父の代から続く不動産会社に入社し、後を継いだ。

■鼻で笑われても

 不動産は手堅い事業だと思っていた高梨社長に転機が訪れたのは11年の東日本大震災。浦安市の液状化で顧客が減り、賃料も下がった。地面の液状化の可能性が分かる技術を開発しようと補助金集めに走ったが、ことごとく跳ね返された。

 そんな時、飲み会の席で、知人の税理士に「地方でコインランドリーが人気らしい」と聞いた。半信半疑で調べてみると都心にもまだビジネスチャンスがありそうだ。ちょうど空室が決まっていた自社物件のアパートの1階にコインランドリーを作ることを決めた。

 何か特徴を出そうと考えていると、妻の一言がヒントになった。当時1歳の娘の入浴後に保湿剤を塗り忘れたら、「最近はアトピー性皮膚炎になる子どもが多いから、きちんと保湿して」と怒られたのだ。周囲に聞くと、子供のアレルギーが心配でコインランドリーの洗剤に不信感を持つ母親が多いという。

 そこで思い出したのが、補助金集めの際に市の施設で目にした「水で油を落とせる」とうたう工業用の強アルカリイオン水のポスター。水だけで洗濯できれば皮膚疾患の心配もない。すぐに開発会社の社長にアポを取ると「理論的には可能」と言われた。胸の中でガッツポーズをした。

 水で洗うコインランドリーを共同開発してくれるパートナーを探すために業務用大手を何社か訪問したが、結果は惨敗。「洗剤の泡立ちが目に見えなきゃ客は来ませんよ」と鼻で笑われた。諦めかけた頃、話を聞きつけた商工会議所の後輩から業務用洗濯機の山本製作所(広島県尾道市)を紹介された。当時の社長は熱心に耳を傾け、2つ返事で快諾してくれた。早速アルカリイオン水20リットルを尾道市に送った。

 コスト面からアルカリイオン水は自社で精製することにした。初期投資は2000万円。不動産会社の前社長の父親らは猛反対したが、「失敗したら改良すればいいから、まずは挑戦しないと」と説得した。

■スマホで支払い

 13年6月、浦安市内に1号店を開いた。最初の1カ月は売上高が10万円程度。だがクーポンを配ったり、娘が通う保育園の母親に説明したりするうち、口コミで人気が広がっていった。2号店に置いたアンケート箱には主婦から「隣の利用者が洗剤を入れていたので絶対にやめさせて」との声があり、普及を確信した。

 場所選びは不動産会社の目利きが生きた。3号店ではキッズコーナー、4号店では貸しロッカーを併設するなど、利用者の利便性を考えて少しずつ改良を加えた。

 最近、山本製作所と組んで開発したのがスマホを使った「スマートランドリー」。QRコードで洗濯機をロックできる機能や、洗濯中は窓ガラスをくもらせて中を見えにくくする機能を搭載。現在はクレジットカード決済ができるが、今後は電子マネーにも対応する。

 コインランドリーは無人で顧客との接点が作りにくいが、愛着を持って来店してもらえる工夫を試行錯誤した。「国際コインランドリーEXPO」では2年連続で「コインランドリー店アワードIT部門」で受賞した。

 コインランドリーは自宅に乾燥機のない単身者や、布団などを洗いたい家庭から人気が高まっている。厚生労働省によると13年度は国内1万6693軒と、10年間で約4000店増えた。

 ウォッシュプラスは現在、千葉県を中心に9店を展開し、1店舗当たりの売上高は月100万円を超えた。20年には直営店を30店に広げ、コインランドリーが普及する米国進出も視野に入れる。

 不動産とコインランドリーの二足のわらじを履く高梨社長の電話は1日に60回以上鳴る日もある。それでも「どんどん新しいことをやって、変革を起こしていきたい」。忙しさも笑って洗い流す。

(企業報道部 吉田楓)

[日経産業新聞 2018年1月24日付]

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