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東京製鉄、「暴れん坊」復活へ牛歩の前進

東京製鉄の業績が改善しつつある。23日に発表した2017年4~12月期の最終利益は前年同期比20%増の100億円だったと発表した。20年の東京五輪関連の需要を取り込み、最大の懸案だった09年に稼働した田原工場(愛知県田原市)は曲折を経て収益貢献するようになってきた。「暴れん坊」の異名を持つ同社の復活に向け牛歩の前進が続く。

採算重視で体質強化を進める西本社長

「原料の鉄スクラップの上昇スピードが速いが、需要が旺盛で値上げも浸透している」。同日、都内で開かれた決算会見で東鉄の奈良暢明取締役はこう話した。18年3月期の売上高は前期比36%増の1650億円、最終利益は8%増の120億円を見込む。

同社の18年3月期の鋼材販売量は前期比12%増の240万トンになる見通し。東鉄が国内4拠点の電炉で生産する鋼材は「H形鋼」など建設材料が中心で、東京五輪向けや首都圏を中心とした都市再開発関連需要の追い風が吹いている。

田原工場は世界最大級の電気炉を持つ(愛知県田原市)

世界の粗鋼生産の半分を占める中国の動向もプラス材料だ。違法鋼材「地条鋼」の排除に加え、インフラ需要が底堅く輸出が前年同期と比べて3割程度減少している。安値輸出を絞った結果、日本を含む東アジアの鋼材市況が回復した。奈良取締役も「市況の上昇基調が鮮明になっている」と述べた。

鉄鋼の生産は鉄鉱石や石炭を原料とする「高炉」と使用済みの鉄スクラップが原料の「電炉」がある。鉄鋼業界は新日鉄住金やJFEスチールなどの高炉企業が電炉企業などに資本参加するなどして事実上傘下に置いているケースが目立つ。だが、東鉄は完全な独立系企業として、鉄鋼業界の盟主、新日本製鉄(現新日鉄住金)と真っ正面から対峙してきた。

「H形鋼戦争」――。80年代後半。東鉄は高炉の牙城だった建設用鋼材のH形鋼の販売で新日鉄と激しい値下げ合戦を展開。トップシェアを獲得し、業界では今も東鉄の挑戦が語り継がれる。業界団体の日本鉄鋼連盟も脱退しており、業界の暴れん坊として「独立独歩」路線を堅持してきた。

 東鉄は34年の設立。創業家の池谷家が長らく経営の中心にいたが、2006年6月に高松工場長だった取締役でない非創業家の西本利一氏が社長に就任。西本氏は同族経営によるトップダウンから集団指導体制に切り替えながら経営を切り盛りしてきた。前社長の池谷正成氏(現相談役)が主導した巨大工場の行方が東鉄の飛躍のカギを握っている。

09年に約1620億円を投じて稼働したのが電炉最大の田原工場だ。トヨタ自動車のお膝元に立地し、高い技術力が求められる車用鋼板の製造をめざした。電炉は通常、電気代が安い夜間や休日の操業が中心となる。だが、東鉄は田原工場で24時間稼働を計画し、年250万トンの生産をもくろんだ。

新日鉄に再び挑むチャレンジングな戦略投資だったが、稼働直前に米リーマン・ショックに見舞われた。鋼材需要が一気に冷え込んだことで工場稼働率が長く低迷。13年3月期には投資額の約8割の1280億円もの減損処理に追い込まれた。

田原工場は世界最大級の電気炉を持つ。操業の習熟度の向上に時間がかかり、思うように生産量を引き上げることができなかった。だが、工場稼働から10年近く経過し「ようやく生産ノウハウが蓄積してきた」(工場長の足立俊雄常務取締役)という。

同工場はホットコイル(熱延広幅帯鋼)や角形鋼管などを手掛ける。17年度の生産量はその前の年度比約1.4倍の90万トン超になる見通し。今春、岡山工場(岡山県倉敷市)からスラブ(半製品)の調達も始める予定で生産量は一段と増える。まずは電気代が安い夜間・休日のフル操業になる140万トン程度の生産体制の構築をめざす。

車用鋼板の開発も引き続き課題だ。「時間はかかるかもしれないが、着実に前に進んでいこう」。東鉄の西本社長は社内でこう檄を飛ばしている。東鉄は10年以上、開発を進めているが、いまだ一部の自動車部品メーカーからの採用にとどまっている。

原料となる鉄スクラップには様々な不純物が混じっている。老廃スクラップを中心とした原料から自動車用鋼板を本格的に生産している会社は存在しない。「我々は世界で初めての挑戦をしている。もう少しの所まできている」。足立工場長はこう強調する。自動車メーカーの要求する技術力を持つことが同社のブランド力向上につながる。

東鉄の最高益は05年3月期の506億円。18年3月期は増益になるが、ピークの4分の1程度にとどまる。原料となる鉄スクラップ価格や電気代の上昇など経営を取り巻く環境は大きく変化しているが、「稼ぐ力」の回復が求められている。

電炉同業の大和工業共英製鋼などが海外に拠点を設けることで活路を見いだす中、東鉄は国内にしか生産拠点を持たない。海外進出予定も現時点ないという。生産量の3分の1を占める基幹工場の戦力化が同社にとって最大の経営課題だ。

東鉄はこれまで新日鉄住金など高炉メーカーと国内市場を競ってきた。だが、鉄鋼業界はアルミや炭素繊維など異素材との競争も年々激しさを増している。建材向けが主力の東鉄だが、業界の「パラダイムシフト」に備える必要も出てきている。反骨の「DNA」を発揮できるか。一匹オオカミが再び前に進もうとしている。     

(企業報道部 大西智也、井上みなみ)[1月24日付日経産業新聞]

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