2018年2月24日(土)

海ではなく陸かも 地球生命の起源に新説
日経サイエンス

コラム(テクノロジー)
科学&新技術
2018/1/27 6:30
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 生命は海で誕生したというのが通説だが、近年、陸上の温泉で誕生したのではないかとする説が注目されている。

 従来説で有力視されているのは太古の地球に存在した深海底の熱水噴出孔の周辺域。熱水には鉄や硫黄などの鉱物が含まれ、メタンや硫化水素などのガスも噴き出している。これらが生命誕生に必要なエネルギーと栄養物を提供したと考えられている。

生命の陸上起源説のイメージイラスト=Kenn Brown, Mondolithic Studios

生命の陸上起源説のイメージイラスト=Kenn Brown, Mondolithic Studios

 ただ太古の地球の陸上には温泉や間欠泉が存在したと考えられ、その温泉水にも各種の鉱物が含まれガスが出ている。深海の熱水噴出孔周辺との大きな違いは、温泉周辺の水たまりが干上がったり湿ったりを繰り返すことだ。そこで米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究グループなどは次のような生命誕生のシナリオを提唱している。

 温泉の水たまりが干上がると、水中を漂っていた様々な物質は濃縮され膜状になって岩にへばりつく。膜は多層になっていて、層の間には有機物が挟み込まれ、それらが自然に結合して重合体と呼ばれる複雑な分子が形成される。その場所に再び温泉水が供給されて水たまりが復活すると、多層膜ははがれて水中に浮遊し、その中には重合体を包み込んだ小胞のようなものができる。

 そして水たまりが再び干上がると、小胞同士が凝集、相互作用し、より複雑な重合体を含むより大きな小胞ができる。このようなサイクルが繰り返されることで、最終的に生物の細胞の原型のようなものができあがる。

 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究グループは、オーストラリア北西部のピルバラ地域にあるドレッサー累層という34億8000万年前の堆積岩を調査。当時、その場所が陸域の温泉地帯であり、その水たまりで微生物が集まってできたとみられる薄層の化石を発見した。

 生命が誕生したのは約40億年前とされるが、その頃もドレッサー累層にみられるような環境が陸域にあったのではないかと、ニューサウスウェールズ大学とカリフォルニア大学サンタクルーズ校の共同研究グループは考えている。研究グループは、深海底の熱水噴出域では陸上と違って常に水が大量に存在するため、有機物が濃縮して重合体を形成するようなプロセスは考えにくいと主張する。

 これに対し米航空宇宙局(NASA)の研究グループなどは、深海底の熱水噴出孔の岩石内に多数存在する微細な孔における物質の様々な化学反応によって、細胞の原型ができたと主張する。生命が誕生したのは陸なのか、それとも海なのか、論争は今後も続きそうだ。

(詳細は25日発売の日経サイエンス2018年3月号に掲載)

日経サイエンス 2018年3月号

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出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

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