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ストレス無縁、買い物が変わる アマゾン・ゴー体験記

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米アマゾン・ドット・コムは22日、米シアトルでほぼ無人のコンビニエンスストア「アマゾン・ゴー」を一般向けに開業した。画像認識や深層学習の技術を駆使することで「棚から品物を取って歩いて外に出るだけ」で会計が済む仕組みを作り上げた。お店にはあって当然だったレジのない店はどう実現されているのか、どんな買い物体験ができるのか。早速、訪ねてみた。

■アプリかざしてゲートを通過

22日午前10時すぎ。アマゾンの社屋が集まるシアトル市内のエリアに到着した。アマゾン・ゴーは、建設発表時に話題になった球体の温室のようなデザインの社屋の隣の区画にある。「混んでいるだろうな」と恐る恐る店に近づくと、思いのほか行列はなし。店内には数十人の人影が見えるものの、回転が速そうな印象だ。入り口には「JUST WALK OUT(そのまま歩いて出るだけ)」というポスターが貼られ、スタッフが開店記念のエコバッグを配っていた。

念のため「これで買い物できますよね?」と、昨晩スマートフォン(スマホ)にダウンロードした「アマゾン・ゴー」アプリをスタッフに見せる。アプリの設定時に自分のアマゾンの口座を登録しており、ゴーで購入した商品の代金もこの口座から支払われる仕組みだ。「そう、アプリの画面のQRコードをかざして入ってください」とスタッフ。促してくれた先に改札のような6列の白いゲートがある。

天井にカメラずらり

白いゲートを通ってパッと目に飛び込んできたのは、天井を埋め尽くさんばかりに設置された黒いカメラだ。数は130台を超えている。そのカメラがQRコードで読み取った情報とカメラで捉えた画像から買い物客を特定し、店内で何を棚から取り、自分のバッグに入れるかを追跡する。

米メディアによれば、客のプライバシーを考慮して、顔を認識するのではなく衣類などの特徴をカメラで捉えているという。日本のコンビニとほぼ同じ約170平方メートルの店内には、サンドイッチやヨーグルトといった軽食や、ポテトチップス、ビールなどが売られている。顔を認識していないとはいえ、卵サンドにするかツナサンドにするか迷っている様子まで見られていると思うとドキッとしてしまう。

コンビニの陳列棚には様々な商品がひしめいている。似たようなものもあるし、本当に何を購入したか正確にわかるのだろうか。カップケーキの棚の前でひとつ実験をしてみることにした。

まず、チョコレート味をバッグに入れ、やっぱり戻して、同じ段のストロベリー味を取る。いったんほかの商品を見に行った後で、再度ストロベリー味から同じ段に陳列してあったレッドベルベット味に変更する。カメラの死角になるかと思い、できるだけ猫背になって手元を覆い隠すようにしてみた。店内でアプリを見てもリアルタイムでカートの中身がわかるわけではないので、結果は店を出てからのお楽しみだ。

年齢確認は有人で

「無人コンビニ」と書かれることが多いアマゾン・ゴーだが、明確に人間のスタッフがしている仕事が2つあった。一つは棚への商品の補充、もう一つはアルコール売り場での年齢確認だ。ワインに手を伸ばそうとすると、「あなた、ID(身分証)を見せて」と引き留められた。ここも自動化できたら面白いが、法律違反を防ぐにはスタッフが確認するほうが安心なのかもしれない。

さて、サンドイッチ、カップケーキ、ヨーグルト、缶入りのワインをバッグに入れて買い物は完了だ。「えっと、レジはどこかな」。長年の習慣のせいだろう、レジがないコンビニに来ているのに、ついレジの場所を探していた。きょろきょろしていたせいか「そのまま出ていいんですよ」とスタッフが笑顔で教えてくれた。

記者は普段、多くの買い物を「アップルペイ」で済ませている。スマホをかざして顔認証するだけなので、財布から現金を出していた数年前までと比べると店での会計はかなり楽になった。それでもレジにたくさんの人が並んでいたら、列をなして待つのは同じ。きょうは初めてで不思議な感覚だったが、レジそのものがなくなるのは画期的だ。

到着時に「混んでいない」と感じたのも、レジ待ちがない回転の速さが関係していそうだ。この日は昼の12時前後に近隣のオフィスの人たちが物見遊山で大挙してやって来たので100人近い列ができる場面もあったが、それでも「待ち時間は10~15分」(スタッフ)。レジがボトルネックにならない効果は大きい。

画像認識の勝利

店を出た後、アプリを開くとレシートが表示されていた。近くのカフェに入り、購入したものと一つひとつ付き合わせる。サンドイッチは卵サンド、ヨーグルトはブルーベリー味、ワインはロゼ。すべて正解だ。アマゾンによる「画像認識と機械学習の成果」を惑わせようと試みたカップケーキも、きっちりと最終的に購入したレッドベルベット味がレシートに記載されていた。ちなみに、万が一間違っていたときは「払い戻し」を請求できる機能もアプリに付いていた。

「近未来のコンビニ」を訪ねて感じたのは、これまでの常識を取り払うことで買い物という行為はまだまだ大きく変わるということだ。今までの常識と異なり最初は戸惑っても、ストレスが少ないほうに人は慣れる。1歳7カ月の女の子を育てながらデザイン事務所で働いているというリンサル・カンパウさん(42)は「時間に追われている働く母親にとって、レジの待ち時間を気にせずに立ち寄れるって素晴らしいことよ」と話した。

一方、この仕組みが普及すれば、ネットでもリアルでもすべての消費行動がアマゾンに丸見えになる可能性は否定できない。今のところアマゾンは「シアトルの1店舗に集中する」と米メディアに語っている。けれどもし、傘下のホールフーズ・マーケットに導入され、音声AIの「アレクサ」が様々な家電に入ったように、アマゾンの仕組みが世界中の小売店に組み込まれていったら――。便利さと引き換えに何かを失ってしまうのかもしれない、との思いが一瞬頭をよぎった。

(シアトル=佐藤浩実)...

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