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アスリートに寄り添う カヌーの不祥事を教訓に
編集委員 北川和徳

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2018/1/24 6:30
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新年早々、スポーツ界で不祥事が続いている。カヌーでライバル選手のドリンクに禁止薬物を混入させるという前代未聞の事件に驚かされたと思ったら、今度は競泳の代表合宿で先輩から後輩への暴力が明らかになった。悪質さは比較にならないが、いずれも2年後の東京五輪を目指す代表クラスのアスリートが犯した過ちだけに、悪い意味での注目を集めてしまった。

教育や啓発が再発防止策になるのか

個人的な意見ではあるが、これをもって「日本のアスリートの高潔性はどこにいってしまったのか」などと嘆く必要はないと思う。競泳の暴力問題は以前なら見逃されていたような小さないざこざも許されなくなったという見方もできる。ただ、不祥事を教訓として生かすためには、スポーツ競技団体を運営する偉い人たちがアスリートに対する意識を変える必要があると考えている。

競技団体がアスリートに対する意識を変える必要がある(日本カヌー連盟の成田昌憲会長=右=と握手する小松正治選手)=共同

競技団体がアスリートに対する意識を変える必要がある(日本カヌー連盟の成田昌憲会長=右=と握手する小松正治選手)=共同

スポーツ庁は18日、国内の各スポーツ競技団体(NF)を集めてスポーツのインテグリティー(高潔さ)確保に関する緊急会合を開催。パラリンピック競技も含めた97団体、156人が出席した。

残念ながら意義のある会合とは思えなかった。スポーツ界の不祥事のたびに似たような光景が繰り返されるが、いつも教育と啓発の必要性が訴えられるばかりで、原因の究明や具体的かつ効果的な対策が議論されることはあまりない。「われわれの時代にはこんなことはなかったのに」というような、どこか現役選手に対する上からの目線も感じる。今回のカヌーの事件について言えば、教育や啓発が再発防止策になるとはとても思えない。30歳を過ぎた大人が、だれもが悪いと分かっていることを悪いと知りながらやった行為である。

スポーツの世界には「アスリートは高潔であるべきだ」「優れたアスリートは人間性も優れているべきだ」という考え方がある。それはいいのだが、困ったことに日本では、そこから「べきだ」を取ってしまった根拠のない思い込みを持つ人も多い。スポーツが好きで関わっている人ほどその傾向が強い。だから不祥事が起きると過剰に反応し、「原因は無知によるもの。ちゃんと教えてやらなければいけない」となってしまうのだろう。

「原因はコミュニケーション不足」

確かに日本のアスリートの倫理観は他国に比べて高いとは思うし、スポーツの教育的な効果も否定はしない。だが、それはあくまで平均的な比較の問題だ。スポーツに打ち込めばだれもが必ず素晴らしい人格者に育つわけではないし、どんな世界にでもルールを破ってしまう不心得者は存在する。

スポーツ庁が開いた緊急会合で、薬物混入問題について謝罪する日本カヌー連盟の成田昌憲会長=共同

スポーツ庁が開いた緊急会合で、薬物混入問題について謝罪する日本カヌー連盟の成田昌憲会長=共同

私がスポーツ取材を始めた30年以上前にも、五輪に派遣された複数の日本選手が大会期間中に大麻を吸引するというとんでもない事件があった。トップアスリートが関わる不祥事は過去から何度も起きている。最近になって急に増え始めたわけでもない。

18日の会合では、唯一、当事者であるカヌー連盟の報告と再発防止策にうなずけるものが多かった。古谷利彦専務理事は、原因としてアスリートとのコミュニケーション不足を挙げて謝罪した。

「(加害選手は)ドクターストップがかかるくらい練習は絶対に休まない、常にベストを尽くす選手だった。自分を良く見せようとする部分もあった。われわれは彼の内面にまで突っ込んで不安な面などにアプローチできなかった」と悔やみ、「カウンセリングをもっと活用するべきだった。アスリートのストレスを取り除くためのカウンセリングのスタイルもしっかりと確立させていきたい」と話した。

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