60代、戦う覚悟はあるか シニア活躍の条件

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2018/1/23 6:30
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企業には希望する社員を65歳まで雇うことが法律で義務づけられている。人手不足で法に対応するまでもなく高齢者の活用は進むが、企業は真に戦力にするための仕組みを入れる。年齢による衰えに自覚的になり、新たな気持ちで臨むことが働き手に求められている。

■テスト・研修は必須、体力・気力問う

人手不足が深刻な地方で定年制の廃止に踏み込む企業が出ている。石川県が地盤の三谷産業グループで、ガソリンスタンドなどを運営する三谷サービスエンジン(同県野々市市)もそうだ。

2017年12月26日。いしかわ総合スポーツセンター(金沢市)で67歳と68歳、69歳の3人の男性が体力測定をした。定年の60歳を過ぎて給与体系が変わる継続雇用で働いてきたが、その上限の65歳も過ぎていずれも今はアルバイトだ。

2時間ほどかけて反復横跳びや握力、背筋力、エアロバイクなど10項目以上に挑み、全国や県の平均値と見比べた。「思ったようにいかない。もう少し運動しよう」。ガソリンスタンドで夜勤をする得田良也さん(69)は背筋力や垂直跳びなどで全国は超えたが、県には及ばなかった。

テストを取り入れたのは17年4月に定年を廃止したため。役職は65歳で返上するが、仕事の内容を限らずに働き続けてもらう。ただし健康である限り。65歳以上は毎年の健康診断に加え、年1回の体力と知力テストを受けることを必須にした。

同社は50歳未満が8割を超える。高卒を中心に採用してきたが、「地場の上場企業や首都圏の企業まで高校に手を伸ばしてきている」と佐野充洋取締役(54)。

人件費は増えるが、学生の採用活動費を考えると経験と技術を積んだ高齢者をつなぎ留めるのは割高ではない。社内には「定年の延長でいいのでは」との意見もあったが、人によって衰え方が違い、年齢での線引きは不要だとの判断になった。

継続雇用中の4人は正社員に復帰し、200万円近く下がっていた年収が戻った。整備士の川幡清治さん(61)は「(年金をフルに受給できる)65歳で仕事を辞めようと考えていた」が、「体が動く限り働き続けたい」と気持ちが変わった。

テストを受けた3人はいずれも5段階中の「3」だった。会社は今のところ引退の基準を設けておらず、「1」や「2」でも引退を強制するつもりはない。

60歳以上の社員は年1~2人増える見通し。管理は年々難しくなり、第一線で働き続けるための体力や判断力をいつまで保てるかは分からない。3月までには知力テストも予定する。佐野取締役は「本人にいつまで働くかを決める材料にしてもらう」。社員の状態をつかみつつ、引き際を探っていく。

社員が多い大企業では人件費が大幅に増えるため、一定の年齢で線引きをする仕組みを残すために60歳の定年の引き上げを選ぶ例が多い。60歳はまだ若い。体力や知力の前に、「目の上のたんこぶ」にならないように謙虚さが求められる。

自動販売機向けの清涼飲料販売会社、サントリービバレッジソリューションの樫谷昌邦さん(60)は15年4月から首都圏支社(東京・中央)で専任部長を務める。グループの自販機運営会社、サントリービバレッジサービスの関東・信越営業本部(長野市)の営業部長から57歳で転じた。

持ち株会社のサントリーホールディングス(HD)は13年に定年を60歳から65歳に延ばし、グループの大半の社員を正社員で雇い続けることにした。それまでは1年ごとの嘱託契約だった。

定年の延長で58歳の全社員に川崎市の研修所で1泊2日の研修を受けてもらうようにした。グループに分かれて泊まり込む。参加が必須の研修では唯一の宿泊型だ。

樫谷さんは30年間、主に自販機の営業に携わり、全国各地に赴任。出向先で社長も務めた。16年3月の研修で25人の参加者同士で社歴を紹介し合うと、海外で工場を設立した人や出産・育児をしながら仕事を続けた女性がいた。「皆、自分以上に頑張っている。自分はまだまだ」だと思った。

専任部長は部長を勇退した後の役職で直属の部下を持たないことが多い。「最近の若い世代は効率的に仕事をする」と思っていたが、研修でマインドがリセットされ、すすんで声をかけると、若い人でも「アナログなやり方の良さを分かってくれる」と気づいた。

サントリーHDは定年の延長でシニアの職歴や人生設計を支援する研修を3つ加え、計5つになった。60歳以降もしっかり働いてもらうため、58歳の研修は「リバイタル(生気を取り戻す)」をテーマに掲げる。国家資格を持つコンサルタントの座学や参加者同士の体験講座、懇親会で構成する。16年は全6回で計124人が参加した。ヒューマンリソース本部の光延千佳課長(54)は「一生成長したい、まだまだ戦力として働き続けたいという意識を改めて持ってもらう」と話す。

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