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日本ハム・清宮にみた 大志と細心のほどよい均衡

編集委員 篠山正幸

「いずれここに、自分も名を連ねたい」。早実の先輩、王貞治さんらの名が刻まれた野球殿堂を見学した日本ハム・清宮幸太郎(18)はそう語った。大志をもって未来を遠望する一方、始まったばかりのプロ生活ではこの世界の厳しさを自覚し、足元の一歩、一歩に焦点を合わせている。大志と細心を一つの胸に合わせもっているのも、スターの資質といえるのかもしれない。

入寮して笑顔をみせる清宮

1月11日、12球団の新人が一堂に会し、社会人としてのルールを学ぶ日本野球機構の研修会が行われた。座学に先立ち、野球殿堂博物館を見学した清宮は感想を問われ「自分も名を……」と語った。

プロ志望を明かした昨秋の記者会見でも、王さんの通算本塁打記録868本を目指さなくてはいけない、などと語っている。志の大きさと、それをためらいなく公言できるおおらかさが、すがすがしい。

技量とはまた別のプラスアルファ

新人合同自主トレの初日に視察した栗山英樹監督は「これだけの宝を預かったので」と、今後の責任の重さをかみしめるように語った。一挙手一投足が活字になり、映像映えするという、野球の技量とはまた別のプラスアルファがある点は、確かにプロ野球界の宝に違いない。

8日の入寮、9日の新人合同自主トレの様子を取材した。その始動からうかがえたのは人間的なおおらかさの底にある「細心」だった。

自分の足元を見つめながら、プロの第一歩を刻んだ

甲子園を目指した昨夏の最後の大会で負けてから「計画的に練習してきた」という。早実の後輩の練習にまじり、生きた球を打つことを意識してやってきたそうだ。高校からプロに入った打者にとって、最難関になるのが木製バットへの対応。「計画的に」とはそのあたりを見据えたものとも思われる。いくつかのタイプのバットをあつらえて、試しているという。

自主トレ初日は千葉・鎌ケ谷の室内練習場に報道陣が詰めかけた。一身にスポットライトが集まるなか、清宮は冷静に周囲を観察していた。

「新人が自主トレをやっているところで、現役の方(先輩)が(練習を)やっている。すごいな、と。こういうところで地道にやることが大事なんだなと」。騒々しさにも我関せずと、黙々と自分の練習に集中している先輩選手の姿をしっかり見ていた。

監督やコーチ、報道陣の視線を浴びながらも、清宮自身は周りをよくみていた

入寮時の記者会見では年末年始に祖父母を相次いで亡くしたことや、星野仙一・楽天球団副会長の急逝など、多岐にわたる質問が浴びせられた。その一つ一つに見出しが立つような受け答えをしていたのが、印象に残った。

プロでの活躍を見せられなかった祖父母に対し「フェンス際の打球を一押ししてくれたら」。また星野さんには、ドラフトの抽選の結果、縁がなかったものの、指名してくれたことに感謝しつつ「恐縮ですが、天国から自分の活躍を見守ってほしい」と語った。

記者はあらかじめ質問を考えている。答える側は即興だ。早くから注目され、取材慣れしているとはいえ、その反射神経と目配りの細やかさには感心するばかり。

全員参加の紅白戦、最初の関門

栗山監督から2月17日に全員参加の紅白戦を行うことを告げられた。

人の気をそらさない受け答えも持ち味

キャンプの振り分けで、まずは1軍入りとなった清宮にとって、最初に待ち受ける関門となる。そう考えれば、何が何でもその試合に調子を合わせ、勝負をかけるんだ、と力が入りそうなものだが、清宮は少し違った。

「監督からも(2月17日と)いわれたので、それに向かっていかないと。合わせなきゃいけない。けれども、まだ始めなんで。試合で結果が出なくても浮き沈みしないようにしたい」

天性のものなのか、中学や高校の競技生活を通じて学んできたものなのか、自分を客観視できているのだろう。大志と細心のほどよい均衡……。この先多くの試練に見舞われるだろう。実際、19日には右手親指の故障が発表され、自主トレのメニューが制限されることになった。しかし、プロの壁の高さに慌ててパニックに陥る、という新人の挫折のパターンとは無縁ではないだろうか。

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