2018年11月18日(日)

売れ筋は大型車 メーカー、環境規制と消費者の板挟み
NextCARに挑む 米国からの波頭(下)

コラム(ビジネス)
2018/1/19 6:30
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日本の3倍以上、年間1700万台の新車が売れる米国市場は日本の自動車メーカーにとって生命線だ。その米国ではカリフォルニア州などが「ZEV(排ガスゼロ車)」の販売を一定程度義務付ける規制を導入し、規制の網はオレゴン州など全米の新車需要の3割近い全10州に及ぶ。だが日系各社を悩ませるのは、消費者が厳しい規制に歩調を合わせるかどうかだ。

日産自動車は「インフィニティ」のコンセプト車で新型エンジン搭載をうたった

日産自動車は「インフィニティ」のコンセプト車で新型エンジン搭載をうたった

歴史的に環境規制を先導してきたカリフォルニア州の存在や、米テスラの台頭。米国は世界でも電気自動車(EV)シフトが先行する素地が整っているはずだが、デトロイトで開催中の北米国際自動車ショーに姿を見せた日系各社の幹部は一様に、市場で求められているモデルとの乖離(かいり)に気をもんでいた。

EV普及見通しにくく

ホンダの北米地域本部長、神子柴寿昭専務は足元でガソリンエンジンのライトトラックが売れていることを指摘。「乗用車と比べて燃費の良くない、環境負荷が高い大型車だ。それがお客様の今の思考であるのは事実」と話す。環境と財布が許せば、大きな車をゆったり乗りたいと考える消費者が多いのが米市場だ。

ホンダは17年、30年までに世界販売の3分の2をハイブリッド車(HV)やEVなどの電動車にする長期ビジョンを発表。「北米はそのなかでも世界販売をリードする役割を担っていく地域」(神子柴専務)と位置づける。それを支える商品面でも中型セダン「クラリティ」シリーズでプラグインハイブリッド車(PHV)、EV、燃料電池車(FCV)を展開する。

カリフォルニア州のZEV規制は、18年モデルから販売台数の一定比率をEVやPHV、FCVにすることを義務付ける。18年は4.5%相当だが25年に22%に引き上げられ、日本勢が得意なHVは含まれない。航続距離によりZEV1台が4台に換算されるなどのルールもあり、未達の場合は他社からの「クレジット」購入や罰金が必要だ。

問題は規制をきっかけに、どれだけEVやFCVの普及が進むかだ。英IHSによると17年の米国市場でEVとPHVは1.3%程度。航続距離が伸びれば全米販売の2%程度でも規制への対応は可能との見方もある。そうなるとハードルは低くなるが、限られた市場に多額の開発費をつぎ込む意義は薄れる。

日系各社にとって現実的な解は、高級価格帯の商品戦略かもしれない。日産は高級ブランド「インフィニティ」を電動車専用ブランドにする方針だ。西川広人社長は16日、北米国際自動車ショーの関連イベントで「プレミアム、そして高い電動化率を特長とするブランドにする」と語った。

将来像に迷い

もっともインフィニティは前日、新型エンジンを搭載したコンセプト車を華々しく世界初披露したばかり。可変圧縮比エンジンと呼び、効率よく高い出力を得られる。披露会でインフィニティのクリスチャン・ムニエ理事は「ディーゼル並みのトルクを持ち、マラソンランナーと短距離走者の特長を持ち合わせる」と強調した。

コンセプト車は3~5年後に投入するモデルの原型となることが多く、将来像を決めかねているという印象を与えた。

「EVやFCVなどすべてのパワートレインに対応する」。トヨタ自動車も電動化の訴求に高級ブランドを活用する。15日、自動車ショーでは高級車「レクサス」ブランドで都市向けの多目的スポーツ車(SUV)の最上級コンセプト車「LF―1リミットレス」を発表し、北米トヨタのジェフ・ブラッケン副社長がアピールした。

EV、FCV、PHVなどに対応するトヨタ自動車「レクサス」のコンセプト車

EV、FCV、PHVなどに対応するトヨタ自動車「レクサス」のコンセプト車

同モデルは日本刀のような形状のSUVコンセプト車。披露会の会場を囲むスクリーンには「FCV」「EV」「PHV」「HV」などの文字が浮かび、ブラッケン副社長が「25年までにすべてのレクサスモデルに電動車を設ける」とした。セダンの旗艦車「LS」、クーペの最上級「LC」に並び、今回のSUVの最上級に位置付ける今回のコンセプトで、エコカーをフルラインアップで対応する姿勢を改めて鮮明にした。

充電設備などのインフラ、航続距離や価格などの技術的な進歩、時の政権の方針。消費者がどれだけZEVを受け入れるかは、多くの要因がからむ。そして消費者の嗜好も、何が転換点になるかは読みづらい。

EVの高級スポーツ車を手掛けるGLM(京都市)の小間裕康社長は「音が出ると恥ずかしい、そんなクルマにセレブは乗りたくない。感性が変わる時代にEVはマッチしている」と話す。かつてはエンジンの排気量や出力の大きさが車のステータスを決め、その頂点に高級車があった。パワートレインの変革期。高級車が環境にかじをきれば、市場のボリュームゾーンが大きく動く可能性も大いにある。

(デトロイト=湯沢維久、工藤正晃)

[日経産業新聞 2018年1月18日付]

NextCARに挑む 北米からの波頭
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