2018年12月19日(水)

「南北融和」、韓国を分断 合同チームに世論反発
"平壌"五輪の様相も 文政権に思わぬ逆風

2018/1/18 22:04
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【ソウル=鈴木壮太郎】平昌冬季五輪を朝鮮半島の緊張緩和につなげようと南北融和にひた走る文在寅(ムン・ジェイン)政権が思わぬ世論の反発にあっている。北朝鮮の宣伝に使われると警戒する保守層だけでなく、文氏の支持層である若者も、アイスホッケー女子の南北合同チーム結成を選手の頭越しに決めた政府を批判しはじめた。

「スポーツを政治利用するな」「選手たちがかわいそうだ」

大統領府ホームページの「国民請願掲示板」には、南北合同チームに反対する書き込みが3万件近く寄せられた。北朝鮮の選手が合流すると、韓国人選手の出場機会が奪われかねない。アイスホッケー女子はプロチームもなく、五輪は選手にとって最高の晴れ舞台。開会まで1カ月を切った今になって突然、夢が絶たれかねない不条理に選手への同情が若者を中心に広がった。

同情だけではない。怒りの本質は、国民との「疎通」をあれだけ強調してきた文政権が、この問題に限っては反対の声に耳を貸さず、選手への事前説明もなしに北朝鮮と話をまとめてしまったことにある。

今の若者は「南北統一」という国民的な悲願より、個人の幸福や権利を重視する。文氏は17日、アイスホッケー女子代表選手と会い「南北が同じチームとして出場すれば歴史の名場面になる」と意義を強調したが、多くの若者には響かない。むしろ大義のためには個人の犠牲をいとわない発言ともとられかねない。

北朝鮮は平昌五輪に500人規模の代表団を送り込む。芸術団はソウルや五輪会場となる江原道江陵で公演し、いわゆる「美女応援団」も派遣するとみられ、平昌五輪を北朝鮮の宣伝の場に活用する意図が透ける。

保守系野党「自由韓国党」の洪準杓(ホン・ジュンピョ)代表は「平昌(ピョンチャン)五輪ならぬ"平壌(ピョンヤン)"五輪だ」と警戒感をあらわにした。一方、革新系与党「共に民主党」の秋美愛(チュ・ミエ)代表は「保守系野党は平和五輪を政治宣伝で妨害している」と強く反発する。文氏の支持層である若年層まで批判の声を上げる現状は南北融和を急ぐ文政権と世論との間に乖離(かいり)があることを示す。

17日の会談では平昌五輪の開会式での南北合同入場行進と、白地に青で朝鮮半島を描いた「統一旗」の使用で合意した。この統一旗の採用も世論の受け止めは悪い。世論調査会社リアルメーターによると合同入場行進では「それぞれの国旗を使うべきだ」との回答が「統一旗」を上回った。

過去の合同入場行進では屈託なく受け入れた統一旗も、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速させ、朝鮮半島の緊張が高まった今となっては複雑な心境もある。世代別では「統一旗」を支持したのは40歳代だけで、保守が多い高齢者層と合意形成を経た意思決定を重視する若者は支持しなかった。

韓国政府もこうした世論を気にしている。大統領府高官は18日「合同チーム結成が公正でも正義でもなかったという指摘は認める。選手に影響を及ぼさないよう最善を尽くす」と語った。

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