2019年2月22日(金)

ピッチの風

フォローする

川崎がJ1初Vで証明した3つのこと(後編)
武田信平・前会長に聞く

(1/3ページ)
2018/1/20 6:30
保存
共有
印刷
その他

 昨季の明治安田生命J1リーグ。2017年12月2日の最終節で劇的な逆転優勝を遂げた川崎フロンターレを感無量の面持ちで見詰めた人がいる。00年12月から15年4月まで川崎の社長、それから1年間は会長としてクラブの発展に尽力した武田信平さん(68)だ。前編に続き、手塩にかけたクラブの歩みを振り返ってもらった。(聞き手は武智幸徳)

01年から04年までJ2で戦い、05年にJ1に昇格すると平均入場者数は前年の9148人から初めて1万人を超え、1万3658人に達した。地道な活動が評価されたということだろう。

算数のドリルにまでフロンターレ

武田信平さん

武田信平さん

行政には「とにかく何でもいいんで『フロンターレを利用してください』」というお願いの連続だったのが、だんだんとあちこちから『フロンターレの選手に出演してもらえないか』と声がかかるようになった。当時の市長の阿部孝夫さんに理解があったから、行政の現場にいる職員の態度も変わってくるようになった。川崎の市立小学校の算数のドリルにまでフロンターレが使われるようになった。

「ドリルの件は、天野春果君という元プロモーション部部長で、今は東京五輪、パラリンピックの組織委員会に転出した、突貫小僧みたいな男が頑張った。08年に彼がJリーグの欧州視察に出かけたとき、ロンドンのアーセナルに属するセスクというスペイン代表選手が、スペイン語の教科書に使われていると知らされ、これをフロンターレもやろうと思い立った。川崎市の校長会に出席して趣旨を説明したら一人の校長先生が面白いといってくれて、算数のドリルにフロンターレの選手が出て出題する副読本が完成した。地域貢献活動として、川崎市内の全市立小学校の6年生を対象に、費用をフロンターレが持って配布した」

「これにも裏話があってさ。きっかけは、09年のヤマザキ・ナビスコ・カップ決勝の敗北なんだよ。FC東京に負けた後、選手はショックが大きすぎて、落胆のあまり、一部の選手は表彰式の態度がぞんざいになってしまった。これに当時の鬼武健二チェアマンが激怒され、テレビを見ていた視聴者からも抗議の電話やメールがクラブに殺到した」

武田さんは川崎の初優勝を感無量の面持ちで見詰めた=共同

武田さんは川崎の初優勝を感無量の面持ちで見詰めた=共同

「決勝の翌日、選手を集めてミーティングをした。抗議のメールを印刷したら1メートルくらいの高さになった。それを机の上に置いて。悔しいのはわかるけれど、あの態度はなかったな。自分たちがやったことは悪い。だから、僕とゼネラルマネジャーの福家三男は自らに減給を科そうと思う。準優勝の賞金5000万円も返上することにした。しかし心配するな。賞金の半額は契約通りチームに渡すから君らで分ければいい。そんな話をして部屋を出ていった」

「そうしたら、選手だけでその後、話し合いましたということで主将の伊藤宏樹と選手会長の井川祐輔が僕のところに『本当にクラブに対して申し訳ないことをした。社長や福家さんが減給なのに、のうのうと自分らが賞金をもらうなんてできない。僕らも賞金を返します』と言いにきた。驚いたし、うれしかったね」

「その後、今度はスポンサーであるヤマザキビスケットの飯島茂彰社長のところにおわびにいき、賞金を返上したいと申し出た。すると飯島社長は差し上げたものを返上されても困ります、Jリーグで有効に使ってくださいとおっしゃる。それで宙に浮いた賞金の使い道を考えているうちに、算数ドリルの制作費に充てて全市の小学6年生に配ればいいとなった」

「このドリルは(岩手県の)陸前高田市にも持っていった。東日本大震災で教材も流されて授業もできないので教材を送ってほしいという情報を受け取った川崎市の先生から連絡があって、800冊のドリル全部に(中村)憲剛がサインしてクルマに積んで、ボールやウエアと一緒に運んで配ったら大層喜ばれて。地元のお父さんから後で『震災を口実にして勉強したくないといっていた子供たちがまた机に向かうようになりました』と連絡をもらったりした」

  • 1
  • 2
  • 3
  • 次へ
保存
共有
印刷
その他

サッカーコラム

電子版トップスポーツトップ

ピッチの風 一覧

フォローする
長友のハンドをめぐり、主審(中央)に詰め寄るオマーンの選手たち=APAP

 サッカーのアジアカップはベスト16の顔ぶれが出そろった。今回は日本でテレビ観戦を決め込んでいるが、放送の間にちょっと気になるのが「中東の笛」というフレーズである。そんなもの、本当にあるのだろうか。
…続き (1/18)

香川(手前右)は今季、クラブで出場機会に恵まれていない=ロイターロイター

 サッカーのドイツ・ブンデスリーガの強豪ボルシア・ドルトムントが、11月に日本のスポンサーを対象にしたワークショップを開いた。日本代表の香川真司も所属する世界でも有数のビッグクラブが日本で初めて行う、 …続き (2018/12/7)

川崎はここ5試合、負けていない=共同共同

 2018年の明治安田生命J1リーグは昨季のチャンピオン、川崎が今週末の第32節にも優勝を決める勢いだ。2連覇を達成すれば、12年、13年の広島以来、5チーム目の快挙になる。 …続き (2018/11/9)

ハイライト・スポーツ

[PR]