死後、配偶者に居住権 法制審が要綱案

2018/1/16 18:11
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民法の相続分野の見直しを議論する法制審議会(法相の諮問機関)の民法部会(部会長・大村敦志東大大学院教授)は16日、民法改正の要綱案をまとめた。残された配偶者の保護を強化するのが柱。配偶者が自身が亡くなるまで今の住居に住める配偶者居住権を新設する。生前に書く「自筆証書遺言」を全国の法務局で保管できる制度もつくり、相続を巡るトラブルを減らす。

2月の法制審総会での上川陽子法相への答申を経て、政府は1月22日召集の通常国会に民法改正案など関連法案を提出する方針だ。相続に関する民法改正は1980年以来。高齢化が進み、残された配偶者が生活に困窮するのを防ぐ仕組みづくりが必要だと判断した。

民法では遺産分割について、遺言がなく配偶者と子どもで分ける場合、配偶者が2分の1を相続し、残りの2分の1を子どもの人数で分けると定める。

新制度は遺産分割の選択肢として、配偶者はそれまでの住居に住み続けられる「配偶者居住権」を新設する。住居の所有権を長男など配偶者以外が持っても、配偶者は居住権を得られる。特に期間を決めなければ、配偶者は自身が亡くなるまで住める。

現行制度でも配偶者は遺産分割で所有権を得れば、そのまま住み続けられる。だが住居の所有権を持つと、その分、預貯金などその他の財産の取り分が少なくなり生活が苦しくなる可能性がある。所有権ではなく居住権なら売却する権利がない分、評価額は小さくなるが、預貯金などの財産は多く受け取れるようになる。

例えば、遺産の内訳が評価額2千万円の住居と、その他の財産3千万円の総額5千万円とする。現行制度では配偶者が住居に住み続ける場合、住居の評価額が2千万円なので、その他の財産の取り分は500万円になる。居住権の場合は評価額が1千万円でも、その他の財産は1500万円得られる。

婚姻期間が20年以上の夫婦なら、配偶者に住居を生前贈与するか遺言で贈与の意思を示せば、その住居は遺産分割の対象から外れる。現預金や不動産などの財産を相続人で分ける際に、配偶者の取り分は実質的に増える。これまでは住居以外の財産が少なければ、配偶者が遺産分割のために住居の売却を迫られることもあった。

遺産分割が終わるまで、それまでの住居に無償で住める「短期居住権」も新たに設ける。夫や妻が亡くなったときに、配偶者が急に住まいを失うことを避ける狙いだ。

終末期や死後の手続きなどを自分で考えて準備する「終活」への関心が高まるなか、遺言をめぐるトラブルを防ぐ仕組みも導入する。

生前に被相続人が書く自筆証書遺言は、自宅で保管するか金融機関や弁護士に預けてきたが、被相続人の死後に所在不明になるなどの恐れがあった。公的機関である全国の法務局で保管できるようにして、相続人が遺言があるかを簡単に調べられるようにする。

法務局に預けた場合は、家庭裁判所で相続人が立ち会って内容確認する「検認」の手続きを不要にする。財産の一覧を示す財産目録はこれまで自筆に限定していたが、パソコンでの作成を可能にし利便性を高める。

遺言には公正証書遺言もある。公正証書遺言は公証人が形式の不備などがないように書いて、公証役場で保管するため改ざんや紛失を避けられる。作成に証人2人以上が必要であるなど手間や費用がかかる。自筆証書遺言は1人で手軽に作成できる利点がある。

要綱案ではこのほか、被相続人の親族で相続の対象にならない人でも、介護や看病で被相続人の財産の維持などに貢献した場合は、相続人に金銭を請求できる仕組みも打ち出した。

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