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大技引っ提げ平昌へ スノボHP・戸塚優斗(下)

母親に連れられ3歳で始めたスノーボードの操作は、小3で初めて入ったハーフパイプでも世代の群を抜いていた。ただ、指導するコーチの青木亮は、その才に早くから気を留めながらも案じていた。

その頃、泣きながら滑る戸塚少年の姿が母親らにたびたび目撃されている。練習がつらい時期もあったのか。「精神面がついてくれば世界のトップまでいく。ついてこなければどこかでやめる」と青木。その懸念を吹き飛ばしたのが小6で見た2014年ソチ五輪だ。

ソチに衝撃「五輪に出たい」

岐阜・高鷲スノーパークのテレビに映った平野歩夢らの3次元に舞い、吸い付く着地が「高くてきれいで衝撃だった。五輪に出たいと」。小3から世話してきたスノボショップ「ヘブンストアB」代表の中本健太郎が振り返る。「ここからです。自発的にトレーニングするようになったのは」

目指すものが固まれば開花は早かった。昨春の全日本選手権直前、中本に斜め軸で2回転する「ダブルコーク」を成功させた映像がLINE(ライン)に届いた。「これ出すの?」と尋ねると「出す」と短い返信。通常なら単発で決めてから試合で使うまでに1年かかる。幾重の試練をショートカットし3週間後に本番で決めた。日本代表も多く見てきた中本も「初めてのこと」と舌を巻く。

昨春からはトレーナーをつけ、高難度のスピンに耐えるための腹筋や太ももの強化も本格的に始めた。「体が強くなって技の成功も早くなった」と戸塚がいえば「今はイメージ通りに空中で体を動かせる」と青木。1年前は3回転半がやっとだった戸塚は、平野らトップボーダーたちが我先にと競う、4回転を2つ組み込む前人未到のルーティン(技の構成)を見据える。

4回転は実戦では今月13日に米スノーマスのワールドカップ(W杯)で初めて決めたばかり。常識では4回転のコンボ技は五輪に間に合わない。それでも周囲が諦観どころか期待に胸膨らませるのは「考えていた倍以上の早さで伸びている」(青木)から。五輪開幕へのカウントダウンも関係なしと言わんばかりだ。

あっと言わせた昨秋のニュージーランドW杯遠征。戸塚の母親にはもう一つうれしいことがあった。同部屋になった平野と語り、ともに滑った一人息子が「初めて、というぐらい楽しかった」と高揚して帰ってきたのだ。「技も高さもレベルを上げて、金メダルを取りたい」。心技体に充実一途の16歳は、長足の進歩の先に番狂わせの頂点を狙う。=敬称略

(西堀卓司)

〔日本経済新聞夕刊1月16日掲載〕

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